コラム
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世界的に省エネルギーへの関心が高まるなか、企業が実践できる取り組みはLED照明の導入や空調管理システムの活用、再生可能エネルギーの利用などさまざまです。省エネに取り組むことで、光熱費の削減だけでなく、企業ブランドの向上や投資家からの信頼獲得といったメリットも得られます。
どの方法を選ぶかは企業の規模や業種によって異なりますが、まずは自社に合った省エネ施策を見極め、継続的に実践することが重要です。本記事では、省エネルギーへの取り組みや事例、メリットを紹介します。
目次
エネルギー価格の高騰や政府による法規制の強化などを理由に、省エネ対策の重要性が高まっています。なぜ企業に省エネへの取り組みが求められるのか紹介します。
脱炭素に向けた世界的な動きを大きく加速させたのが、「パリ協定」です。世界はこの協定で定められた気温上昇を1.5℃に抑える目標に向けて動いています。具体的には、世界全体の温室効果ガス排出量を2030年までに43%、2035年までに60%削減する必要があります。
こうした流れを受け、各国は「ネットゼロ目標」を掲げるようになりました。ネットゼロとは、排出した温室効果ガスの量を、森林吸収や再エネ活用などで実質的にゼロにする取り組みのことです。2025年時点で、198か国中137か国の政府がこの目標を表明しています。
参考元:脱炭素ポータル|環境省
Net Zero Stocktake 2025 | Net Zero Tracker
エネルギー価格が急騰したきっかけは、ウクライナ情勢です。これにより、原油や天然ガス、石炭の国際価格が一時的に爆発的に上昇しました。近年は高騰のピークこそ過ぎつつありますが、価格は依然として高水準で推移しています。
背景には、アメリカによる中国製品への追加関税や中東情勢の不安定化、世界的な再エネ投資拡大に伴う供給制約などが考えられるでしょう。
今後もエネルギー価格が大幅に下がる見込みは乏しく、企業にとっては電気代や燃料費の負担が続く可能性があります。そのため、省エネルギー対策を進めてエネルギー使用量を抑え、コスト削減への取り組みがこれまで以上に重要です。
エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応を背景に、日本政府は企業の省エネルギー対策を強化しています。中心となるのが「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)」です。
事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上になると、特定事業者などに指定されます。対象となる事業者には、エネルギー管理統括者とエネルギー管理企画推進者の選任に加え、毎年度の定期報告書や原則毎年度の中長期計画書の提出などが必要です。
また、省エネ法では、中長期的にみてエネルギー消費原単位を年平均1%以上低減することが努力目標として設定されています。取り組みが著しく不十分な場合には、国による指導・助言や報告徴収、立入検査が実施されることがあります。さらに、合理化計画の作成・実施を指示されても従わない場合は、事業者名の公表や命令の対象となり、命令違反には100万円以下の罰金が科されることもあります。
2023年4月に施行された改正省エネ法では、対象となるエネルギーの範囲も拡大されました。従来は主に化石エネルギーの使用の合理化を求めていましたが、現在は太陽光や風力などの非化石エネルギーを含むすべてのエネルギーが対象です。特定事業者などには、非化石エネルギーへの転換目標を中長期計画に盛り込み、使用状況を定期報告することも求められています。
企業にとって省エネは、光熱費を削減するためだけの取り組みではありません。法令への対応や非化石エネルギーへの転換を進めるうえでも、エネルギー使用量を正確に把握し、継続的に改善していく必要があります。
関連記事:【2025年最新】省エネ法の改正で変わったポイントや対策法を解説
企業が省エネに取り組むメリットは、光熱費の削減だけではありません。エネルギー使用量を抑えることで経営コストを削減できるほか、環境への配慮を示すことで企業ブランドや社会的な信頼の向上にもつながります。企業が省エネに取り組む主な目的・メリットを紹介します。
省エネルギーの最大のメリットは、光熱費の削減によるコストダウンです。省エネとは、エネルギーを効率よく使用し、無駄な消費を防ぐ取り組みを指します。例えば、LED照明への切り替えや高効率な空調設備の導入、再生可能エネルギーの活用などが代表的です。
電気・ガス・燃料といったエネルギーコストは、企業の固定費の中でも大きな割合を占めています。そのため、電力使用量を少し抑えるだけでも年間の経費削減につながります。
省エネルギーへの取り組みは、企業の社会的責任(CSR)を果たす行動として評価され、ブランド価値や信頼性の向上につながります。環境問題への意識が高まる中で、社会や消費者は「環境に配慮した企業」を選ぶ傾向が強まっています。
温室効果ガスの削減や再生可能エネルギーの導入など、具体的な目標を掲げて情報を開示する企業は、社会的信用を得やすいです。実際に、環境対応を積極的に行う企業ほど、採用活動や営業面でも好印象を持たれやすくなります。
近年、投資家の間では「ESG投資(環境・社会・ガバナンス)」が重視されるようになっています。例えば、温室効果ガス排出量の削減や再エネ導入など、環境負荷を軽減する取り組みを行う企業は、サステナビリティ経営として高く評価されます。これにより、株主や機関投資家からの信頼を得やすくなり、資金調達や企業価値の向上にもつながるのです。
空調や照明を最適化して快適な職場環境を維持すれば、従業員の働きやすさや生産性の向上につながります。明るさや温度が適切に保たれることで、作業効率が高まり、ミスや事故などのトラブルを抑制できることも大きなメリットです。
また、エネルギー管理を通じて従業員一人ひとりが環境への意識を高めることで、社内全体のモチベーションや一体感が生まれます。自分たちの行動が会社のコスト削減や社会貢献につながっていると実感できれば、働きがいの向上にもつながるでしょう。
企業の省エネルギー対策には、LED照明や空調設備の見直しだけでなく、生産設備の効率化や再生可能エネルギーの導入、エネルギー使用量の見える化などさまざまな方法があります。
特に工場では、コンプレッサーやボイラー、モーター・ポンプなど多くのエネルギーを消費する設備があるため、設備ごとの使用状況を把握したうえで対策することが重要です。
企業が実践しやすい主な省エネルギーの取り組みを紹介します。
LED照明の導入は、もっとも手軽で効果の高い省エネルギー対策のひとつです。資源エネルギー庁によると、白熱電球(60W)を電球型LEDランプに交換するだけで、約85%の省エネ効果が得られるとされています。
LEDは寿命が長く、交換頻度が少ないため、メンテナンスコストの削減にもつながります。最近では、人感センサー付きや調光機能を備えたタイプも増えており、使用状況に応じて自動的に明るさを調整することで、より高い省エネ効果を得られるでしょう。
参考元:令和7年度「夏季の省エネルギーの取組について」|資源エネルギー庁
空調管理システムを導入すれば、温度・湿度・稼働時間などを自動で調整でき、無駄な電力消費を抑えられます。例えば、時間帯や室内の人数に応じて温度を自動調整したり、使用していないエリアの空調を停止したりすることが可能です。IoT技術を活用したシステムでは、エネルギー消費データをリアルタイムで分析し、改善ポイントの把握にも役立ちます。
また、空調設備は日常的な清掃や設定温度の見直しでも省エネ対策として有効です。エアフィルターを2週間に1度清掃すると、冷房時は約4%、暖房時は約6%の消費電力削減につながるとされています。
熱交換器の清掃もおすすめです。実際に、熱交換器の洗浄によって冷暖房エネルギーを約27%削減できた事例があります。ただし、削減効果は設備の汚れ具合や使用状況によって異なるため、すべての設備で同じ効果が得られるわけではありません。
設定温度を見直す方法も取り組みやすい省エネ対策です。冷房時は設定温度を1℃上げる、暖房時は1℃下げることで、空調の消費電力を約10%削減する効果が期待できます。空調管理システムによる自動制御と定期的なメンテナンスを組み合わせることで、快適性を維持しながら継続的な省エネにつなげられます。
再生可能エネルギーを導入するメリットは、コスト削減だけでなく、環境に配慮した取り組みをアピールできることです。環境負荷の少ないエネルギー活用は、ESG経営やサステナビリティ報告の観点からも注目されており、長期的な企業価値の向上につながります。
自社の建物や工場、駐車場などに太陽光発電設備を設置するのが一般的です。これにより、電力会社からの購入量を削減できるだけでなく、余剰電力を売電することで収益を得られる場合もあります。
初期費用は安くないため、国や自治体が実施している補助金制度や税制優遇措置を上手に活用し、初期投資の負担を軽減することが重要です。
関連記事:【2025年最新】中小企業に役立つ省エネ補助金をエリア・設備別に紹介
エネルギー使用量の見える化は、省エネルギーを効果的に進めるうえで欠かせない取り組みです。どの時間帯・部署・設備でどれだけエネルギーを使っているのかを数値で把握することで、消し忘れや待機電力、設備の過剰運転などの無駄を発見しやすくなります。
工場では、FEMS(工場エネルギー管理システム)などを活用し、設備ごとのエネルギー使用量を継続的に収集・分析するのも良いでしょう。電力使用量をリアルタイムで確認できれば、デマンド値が高くなりそうな時間帯を把握し、設備の稼働時間をずらすなど、ピーク電力を抑えるための判断にも活用できます。
また、省エネ法の特定事業者などは、毎年度、エネルギー使用量やエネルギー消費原単位などを定期報告書で報告しなければなりません。日頃からエネルギーデータを蓄積しておけば、省エネ施策の効果検証だけでなく、定期報告に必要なデータを整理する際にも役立ちます。
エネルギー使用量を見える化するなら、エネグラフがおすすめです。安価なエッジデバイスを設置するだけで、施設や設備ごとのエネルギー使用量をクラウド上でリアルタイムに確認できます。設備別の無駄の発見からデマンド管理まで、省エネ対策を継続的に進めるための基盤として活用できます。
工場で使用するコンプレッサーは多くの電力を消費するため、運用方法を見直すことで大きな省エネ効果が期待できます。取り組みやすい方法のひとつが、吐出圧力の適正化です。必要以上に高い圧力で運転している場合、吐出圧力を0.1MPa下げるだけで約8%の省エネにつながるとされています。
また、配管や継手などから発生するエア漏れへの対策も重要です。工場で使用される圧縮空気のうち、一般的に10〜20%程度が漏れているとされており、その分だけコンプレッサーを余計に稼働させることになります。定期的に配管やホース、バルブなどを点検し、漏れを早期に補修することが大切です。
さらに、エアの使用量が時間帯や工程によって変動する工場では、インバーター制御も有効です。必要なエア量に応じてモーターの回転数を調整できるため、常に一定速度で運転する場合と比べて無駄な電力消費を抑えられます。吐出圧力の適正化やエア漏れ対策と組み合わせれば、コンプレッサー全体の運転効率を改善できます。
工場で蒸気や温水を使用している場合は、ボイラー本体だけでなく、蒸気配管やバルブなどから発生する熱損失への対策も重要です。高温の配管に十分な保温・断熱が施されていないと、輸送中に熱が外部へ逃げ、その分だけ余計な燃料を消費します。
配管の断熱は、JIS A 9501の規格以上で施工することで、放熱を約90%抑制できるとされています。特に、断熱材が劣化している部分や、バルブ・フランジなど保温されていない箇所を点検し、必要に応じて補修することが効果的です。
ボイラーから排出される熱を再利用する方法もあります。排ガスの熱を給水や燃焼用空気の予熱に利用する排熱回収設備を導入すれば、捨てていた熱を有効活用して燃料消費量を抑えられます。
また、燃焼に必要な空気量を適正に調整することも省エネ対策として有効です。空気比が高すぎると、余分な空気を加熱したまま排ガスとして排出するため、熱損失が増加します。設備や燃料に応じて空気比を適正化し、燃焼効率を維持することが大切です。
既存設備の効率が低い場合は、排熱を有効利用できる高効率ボイラーやヒートポンプ給湯器への更新も検討しましょう。配管の断熱や運用改善と設備更新を組み合わせることで、工場全体の熱エネルギー使用量を効率的に削減できます。
工場では、ポンプやファン、ブロアなどの動力設備にも多くの電力が使われています。必要な流量が少ないにもかかわらずモーターを一定速度で運転し、バルブやダンパで流量を調整している場合は、余分な電力を消費している可能性があります。
インバーターを導入すると、必要な流量に合わせてモーターの回転数を調整することが可能です。ポンプやファンでは、回転数を下げるほど必要な動力が大きく減少する特性があります。例えば、流量を定格値の90%に抑えた場合、約27%の削減につながります。ただし、実際の省エネ効果は設備の特性や運転条件などによって異なりますので注意してください。
特に、時間帯や生産量によって必要な流量が変化する設備では、インバーター制御による効果を得やすいでしょう。必要以上の流量や風量を抑えることで、設備の運転に必要な電力を削減できます。
また、老朽化したモーターを使用している場合は、高効率モーターへの更新も選択肢です。三相誘導電動機は省エネ法のトップランナー制度の対象となっており、区分ごとにエネルギー消費効率の目標基準値が設定されています。インバーター制御と高効率モーターへの更新を組み合わせることで、工場の動力設備全体の省エネにつなげられます。
参考元:経済産業省関東経済産業局|省エネからはじまる経営力アップハンドブック
電気料金を削減する方法として、デマンドコントロールも有効です。デマンド値とは30分ごとの平均使用電力を指し、デマンド監視装置を活用することで、電力使用量が設定した上限を超えそうかリアルタイムで確認できます。
高圧電力の実量制契約では、当月を含む過去1年間の最大需要電力のうち、最も大きい値が契約電力となります。そのため、一時的に多くの設備を同時稼働させてデマンド値が上昇すると、その後の基本料金にも影響しかねません。設備の稼働時間をずらしたり、優先度の低い設備を一時的に停止したりしてピークを抑えることが、電気料金の削減につながります。
デマンドコントロールを効果的に進めるには、現在の電力使用状況を把握することが重要です。エネグラフを活用すれば、電力使用量をリアルタイムに見える化できるため、デマンド値が高くなりやすい時間帯や設備を把握し、ピークカットを検討する際の判断材料として役立てることができます。
従業員が在宅で業務を行えば、オフィスの照明・空調・OA機器の稼働時間が減り、電力使用量を大幅に抑えられます。また、テレワークの推進はエネルギー面だけでなく、通勤によるCO₂排出の削減や、従業員のワークライフバランス改善にも貢献します。出社が減ることで交通機関や自動車の使用も減り、環境負荷の低減が期待できるでしょう。
省エネ効果を高めるには、従業員一人ひとりの意識改革が欠かせません。社内教育や研修を通じて、省エネの重要性を伝えることも大切ですが、部署ごとにエネルギー使用量を「見える化」して共有するだけでも効果が期待できます。一人ひとりの取り組みは小さくても、身近な行動を徹底するだけで消費電力を大幅に減らせます。
実際に企業が取り組んでいる省エネルギーの事例を紹介します。
| 取り組みの背景 | 製品の品質維持のため、常に空調設備の稼働が必要だった 社会的責任(CSR)や環境負荷低減への意識の高まり |
| 取り組み内容 | 工場屋根に太陽光発電設備(984kW)を設置 ガスコージェネレーションシステム(987kW)の導入など |
| 効果・結果 | 年間約3,336トンのCO₂排出量を削減 年間792kLの省エネ効果を達成 |
参考元:カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例
六甲バターは、省エネ対策を「エネルギー効率の向上」と「事業継続性(BCP)」の両面から実現しています。再エネとコージェネを組み合わせることで、環境負荷の低減だけでなく、災害時にも強いエネルギー供給体制を構築していることが特徴です。
| 取り組みの背景 | 取引先メーカーがサプライチェーン全体で省エネ・脱炭素を求め始めたため 電力コスト抑制やCO₂排出削減が、社内課題・社会的要求になっていた |
| 取り組み内容 | 手作りIoTを設置し、空調・製造設備の稼働状況を見える化 社内報「省エネニュース」の発行 夜間・休日のコンプレッサー稼働停止、サーキュレータ導入など |
| 効果・結果 | 年間 21.3 kL(原油換算)の削減 2022年省エネ大賞受賞 |
参考元:カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例
サンエー電機の特徴は、「手作りIoT」による小規模な見える化構築と、設備運用の細かい制御を組み合わせて電力削減を実現したことです。
| 取り組みの背景 | 従来から省エネ対策を進めていたものの、さらなる効率化を求めた |
| 取り組み内容 | 省エネセンターによる省エネ診断を実施 水銀灯をLED照明に更新 エア漏れ箇所の点検を定期化など |
| 効果・結果 | 電力使用量を約20%削減 従業員の省エネ意識が向上 |
参考元:カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例
日本ワヰコの事例で特に優れているのは、外部診断と可視化ツール活用によって見えていなかった無駄を洗い出したことです。コンプレッサーなど消費電力の高い設備に対し、稼働停止や制御技術(パルス化など)を適用したことが大きな削減効果に直結しています。
企業の省エネルギー対策は、光熱費の削減だけでなく、経営の安定や企業価値の向上、環境負荷の低減にもつながります。特に工場では、LED照明や空調設備だけでなく、コンプレッサーやボイラー、モーター・ポンプなどの生産設備も多くのエネルギーを消費しています。
そのため、設備の高効率化やインバーター制御、デマンドコントロールなどを組み合わせ、生産設備全体を対象に総合的な省エネを進めることが重要です。さらに、2050年のカーボンニュートラルの実現に向けて、企業には継続的なエネルギー使用量の削減と効率化が求められています。
省エネを効果的に進めるには、まず自社でどの設備が、いつ、どれだけエネルギーを使用しているのか把握することが大切です。エネグラフなら、安価なエッジデバイスを設置するだけで、施設や設備ごとのエネルギー使用量をリアルタイムに見える化できます。設備ごとの無駄の発見やデマンド管理、省エネ施策の効果検証にも活用できるため、継続的な省エネ活動の基盤として導入を検討してみてください。

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