工場のカーボンニュートラルとは?課題や取り組み、見える化の方法までわかりやすく解説
カーボンニュートラルへの対応は、製造業や工場において避けて通れないテーマです。脱炭素の流れが加速する中で、取引先や社会からCO₂排出量の削減を求められるケースも増えています。
工場でカーボンニュートラルを実現するためには、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用など、さまざまな取り組みが必要です。その一方で、これらの施策を効果的に進めるためには、まず自社のエネルギー使用量やCO₂排出量を正確に把握することが欠かせません。
本記事では、工場におけるカーボンニュートラルの課題や具体的な取り組み方法、さらに見える化の重要性や実践方法までをわかりやすく解説します。これからカーボンニュートラルに取り組みたいと考えている企業の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの人為的な排出量と吸収量を均衡させ、実質的にゼロとする考え方です。単に排出を減らすだけではなく、どうしても排出される分については吸収や相殺によってバランスを取ることが特徴です。
工場においては、電力や燃料の使用に伴って多くのCO₂が排出されます。そのため、エネルギー使用の見直しや設備の効率化などを通じて排出量を抑えつつ、残る分を適切に処理する取り組みが求められます。
脱炭素とは、温室効果ガス排出の大部分を占めるCO₂を中心に、排出量そのものを削減していく考え方です。化石燃料の使用を減らし、再生可能エネルギーへ転換するなど、排出削減に重点が置かれます。
一方、カーボンニュートラルは排出を完全にゼロにすることだけを意味しません。削減しきれない分については、森林による吸収やクレジットの活用などで相殺し、全体として実質ゼロを目指します。
つまり、脱炭素は「排出を減らす取り組み」、カーボンニュートラルは「排出と吸収のバランスを取る考え方」という点が異なります。
カーボンオフセットとは、自社で削減しきれないCO₂排出量を、他の場所での削減・吸収活動によって埋め合わせる仕組みです。具体的には、再生可能エネルギー事業や森林保全活動などによって創出されたクレジットを購入し、自社の排出量と相殺します。
日本では2050年のカーボンニュートラル実現が掲げられており、企業にも具体的な対応が求められています。
特に製造業ではエネルギー消費量が多く、CO₂排出量も大きくなりやすいものです。そのため、削減への取り組みが遅れると、環境負荷の高い企業として評価される可能性があります。
また、取引先から排出量の開示や削減を求められることも少なくありません。エネルギーコストの高騰も無視できない問題です。省エネや効率化を進めることで、CO₂削減とコスト削減を同時に実現できるため、経営面でも重要な取り組みといえます。
工場でカーボンニュートラルを進めるには、さまざまなハードルがあります。単に設備を入れ替えるだけでは解決せず、コストや運用体制、データ管理など多面的な対応が必要です。工場が直面しやすい課題について解説します。
カーボンニュートラルを実現するためには、省エネ設備への更新や再生可能エネルギーの導入が必要になります。しかし、これらの設備は初期投資が高額になりやすく、導入のハードルとなるケースが少なくありません。
特に中小企業では、設備更新の優先順位を見極める必要があります。生産設備の維持や更新も同時に求められるため、環境対策だけに大きな予算を割くのが難しい状況です。
さらに、設備投資は短期的に利益へ直結しにくい側面もあります。そのため、投資判断が後回しになり、結果として対応が遅れてしまうケースも見られます。
カーボンニュートラルに向けた取り組みは、どの程度の効果が出るのか事前に見えにくい場合があります。設備導入や運用改善を行っても、どれだけCO₂が削減されるのか、コスト削減につながるのかを正確に把握しづらいからです。
特に、複数の設備や工程が関係する工場では、どの施策がどの程度効果を生んでいるのか切り分けるのが難しくなります。その結果、十分な検証ができず、投資判断に迷いが生じることもあります。
カーボンニュートラルを進めるには、エネルギー管理やCO₂排出量の算定に関する専門知識が必要です。しかし、多くの工場では専任の担当者がいない、または十分なノウハウが蓄積されていないケースが見られます。
特に中小企業では、設備管理や生産管理と兼任している場合が多く、脱炭素対応まで手が回らないことも少なくありません。その結果、取り組みが後回しになったり、場当たり的な対応にとどまったりする可能性があります。
工場でカーボンニュートラルを進めるうえで、まず必要になるのがCO₂排出量の把握です。しかし、実際には正確に算定できていないケースも多く見られます。
電力や燃料の使用量は把握していても、それをCO₂排出量に換算するには係数の設定や計算が必要です。さらに、設備ごと・工程ごとに分けて管理しようとすると、データの粒度が細かくなり、手作業では限界が生じます。
また、複数拠点や複数ラインを持つ工場では、データの集計や統合にも手間がかかります。結果として、全体像を正確に把握できず、どこに改善余地があるのか判断しにくくなることも少なくありません。
近年は、自社の排出量だけでなく、原材料の調達から製品の使用・廃棄までを含めた排出量の管理が求められています。いわゆるスコープ3への対応であり、取引先との連携が不可欠です。
しかし、サプライチェーン全体での排出量を把握するには、各企業からデータを収集する必要があります。取引先ごとに管理方法や精度が異なるため、統一した形で把握するのは簡単ではありません。
工場でカーボンニュートラルを実現するには、単一の施策だけでは不十分です。設備の見直しやエネルギーの使い方の改善など、複数の取り組みを組み合わせて進める必要があります。
カーボンニュートラルに向けた取り組みとして、まず優先されるのが省エネ設備への更新です。既存設備は長期間使用されていることが多く、最新設備と比べてエネルギー効率が低い場合があります。
例えば、高効率モーターやインバータ制御機器、LED照明などに更新することで、エネルギー使用量の削減が見込めます。空調設備やボイラーの見直しも効果が大きく、工場全体の消費エネルギーを抑えることが可能です。
また、設備更新は単なる省エネにとどまりません。故障リスクの低減や生産性の向上といった副次的なメリットも期待できます。
カーボンニュートラルの実現には、使用するエネルギーの種類を見直すことも重要です。化石燃料由来の電力をそのまま使い続けるのではなく、再生可能エネルギーへ切り替えることで、CO₂排出量の削減につながります。
具体的には、太陽光発電の自家消費や再エネ電力の購入などが代表的な方法です。自社敷地に設備を設置する場合は初期投資が必要ですが、長期的には電力コストの安定化にもつながります。一方で、電力会社が提供する再エネプランを活用すれば、比較的短期間で導入しやすいことが特徴です。
さらに、PPAモデルのように初期費用を抑えて導入できる手法も広がっています。自社の状況に合わせて導入方法を選ぶことで、無理のない形で再エネ活用を進められます。
設備の更新だけでなく、生産プロセスそのものを見直すことも重要です。工程のムダやロスを減らすことで、エネルギー使用量を抑えられます。
例えば、稼働していない時間帯の設備停止や、待機電力の削減といった基本的な対策でも効果が期待できます。また、工程の集約や動線の見直しによって、無駄な稼働を減らすことも有効です。
さらに、生産計画の最適化も重要なポイントです。需要に応じた稼働調整を行うことで、過剰なエネルギー消費を防げます。
カーボンニュートラルを進めるうえで重要なのが、CO₂排出量の可視化です。現状を正確に把握しなければ、どの施策が効果的なのか判断できません。
例えば、設備ごとや工程ごとにエネルギー使用量を把握すると、無駄な消費が発生している箇所を特定できます。削減余地が明確になることで、優先的に取り組むべき施策が見えてきます。
省エネや再生可能エネルギーの導入を進めても、すべてのCO₂排出をゼロにするのは簡単ではありません。このような場合に活用されるのがカーボンオフセットです。
カーボンオフセットでは、再生可能エネルギーの導入や森林保全などによって削減・吸収されたCO₂をクレジットとして購入し、自社の排出量と相殺します。これにより、実質的に排出量をゼロに近づけられます。
ただし、オフセットはあくまで補完的な手段です。まずは自社での削減を優先し、そのうえでどうしても残る分に活用することが重要です。
カーボンニュートラルは、自社の取り組みだけでは完結しません。原材料の調達から製造、物流、販売までを含めたサプライチェーン全体での対応が求められます。
例えば、取引先に対してCO₂排出量の把握や削減を依頼したり、環境負荷の低い原材料を選定したりすることが挙げられます。また、物流の効率化や輸送手段の見直しも有効な施策です。
近年は大手企業を中心に、サプライヤーへの脱炭素対応を求める動きが広がっています。こうした要請に応えるためにも、自社だけでなく関係企業と連携しながら取り組みを進めることが重要です。
カーボンニュートラルの重要性は理解していても、具体的にどのように進めればよいのかイメージしにくい企業も多いのではないでしょうか。
実際に工場でカーボンニュートラルに取り組んでいる企業事例を紹介します。なお、取り組み事例は経済産業省の「カーボンニュートラル実現に向けた関西企業等の取組事例」を元に紹介しております。
ガスコージェネレーションや太陽光発電を活用し、省エネとBCP強化を両立した事例です。
【取り組みの背景】
【取り組み内容】
【取り組みの結果】
複数のエネルギー手段を組み合わせることで、省エネとレジリエンスを同時に実現していることが特徴です。単なる削減にとどまらず、安定供給まで考慮した取り組みといえます。
現場主導の省エネ活動とIoT活用により、継続的なエネルギー削減を実現した事例です。
【取り組みの背景】
【取り組み内容】
【取り組みの結果】
現場主体で取り組みを継続し、データとIoTを組み合わせて改善を積み重ねていることが特徴です。大規模投資に頼らず、工夫によって成果を出している好例といえます。
CO₂排出量の見える化と再エネ導入を組み合わせ、削減目標の達成を目指した事例です。
【取り組みの背景】
【取り組み内容】
【取り組みの結果】
見える化によって現状を把握し、具体的な削減施策につなげていることが特徴です。データに基づいて取り組みを進めることで、目標達成に向けた道筋を明確にしている事例といえます。
工場でカーボンニュートラルを進めるうえで、最初に取り組むべきなのがエネルギー使用量とCO₂排出量の見える化です。現状を把握しないままでは、どの施策を優先すべきか判断できません。工場で実践できる代表的な見える化の方法について解説します。
関連記事:CO₂の見える化が企業に必要な理由│流れや方法、課題を解説
最も手軽に始められる方法が、Excelを使ったCO₂排出量の管理です。電力使用量や燃料使用量のデータを入力し、排出係数を掛け合わせることで、排出量を算出します。
初期費用がかからず、すぐに取り組めることがメリットです。既存の請求書や検針データをもとに管理できるため、特別な設備も必要ありません。小規模な工場や、まずは試験的に取り組みたい場合に適しています。
ただし、データの入力や計算は手作業になるため、工数がかかりやすくなります。設備ごとや工程ごとに細かく管理しようとすると、負担が大きくなり、ミスが発生するリスクも高まることには注意しましょう。
Excelでの管理が難しくなってきた場合は、CO₂排出量の算定や管理に特化したクラウドツールの活用が有効です。データの入力や集計、排出量の計算を自動化できるため、担当者の負担を大きく軽減できます。
例えば、電力や燃料の使用量を入力するだけで排出量を自動算出できるほか、拠点ごとのデータを一元的に管理することも可能です。レポート作成機能を備えているツールも多く、開示資料の作成にも役立ちます。
より精度の高い見える化を行う場合は、EMSの導入が有効です。工場内の電力使用量をリアルタイムで把握でき、設備ごとの消費状況まで細かく確認できます。例えば、デマンド値の監視やピーク電力の抑制など、運用改善につながるデータを取得できます。
また、蓄積されたデータを分析することで、長期的な改善施策の検討にも活用可能です。導入には一定のコストがかかるものの、継続的な省エネとコスト削減を実現するうえで有効な手段といえるでしょう。
関連記事:エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは?実践的な導入手順とメリット、事例を紹介
設備単位での詳細なデータを把握するには、IoTセンサーや電力計などの計測機器の導入が有効です。電流・電圧・稼働時間などを自動で取得し、エネルギー使用状況をリアルタイムで確認できます。
例えば、コンプレッサーや空調設備など、消費電力の大きい機器にセンサーを設置すると、どの設備がどの時間帯にどれだけエネルギーを使っているのかが明確になります。これにより、無駄な稼働や待機電力の発生箇所を特定することが可能です。
工場のエネルギー使用量やCO₂排出量の見える化には、「エネグラフ」の活用が有効です。
エネグラフは、CTクランプや流量計にエッジデバイスを取り付けるだけで、データを自動取得できます。クラウド上ですぐにエネルギー使用量を確認できるため、現場に行かなくても状況を把握できます。
また、低価格で導入しやすく、設定もシンプルです。安価なエッジデバイスを1台から設置できるため、必要な箇所から段階的に導入できます。
さらに、接続できるセンサーは組み合わせにより最大5点まで対応しています。複数の設備をまとめて管理できるため、効率的な見える化が実現可能です。
工場のカーボンニュートラルに関するよくある質問を紹介します。
中小企業であっても、カーボンニュートラルへの対応は重要です。近年は大手企業を中心に、取引先に対してCO₂排出量の開示や削減を求める動きが広がっています。
また、省エネの取り組みはエネルギーコストの削減にもつながります。設備の運用改善や見える化など、小規模な施策からでも効果が出るケースは少なくありません。
工場でのCO₂削減は、複数の施策を組み合わせて進めるのが基本です。単一の対策だけでは効果が限定的になるため、設備・運用・エネルギーの観点から見直す必要があります。
代表的な取り組みとしては、省エネ設備への更新や再生可能エネルギーの導入が挙げられます。加えて、設備の稼働時間の見直しや待機電力の削減など、運用面の改善も重要です。
また、エネルギー使用量の見える化も欠かせません。データをもとに改善を進めることで、削減効果を高められます。まずは取り組みやすい施策から着手し、段階的に範囲を広げていくとよいでしょう。
関連記事:省エネへの取り組みとは?設備ごとの具体的な対策と事例を紹介
工場のCO₂排出量は、電力や燃料の使用量に排出係数を掛け合わせて算出します。基本的な考え方はシンプルですが、正確に算定するにはいくつかのポイントを押さえておきましょう。
例えば、電力は「使用電力量(kWh)×排出係数」で計算します。排出係数は電力会社や年度によって異なるため、最新の数値を使用することが重要です。
また、Scope1(自社での燃料使用による排出)とScope2(購入電力による排出)を分けて管理するのが一般的です。これにより、どの領域に削減余地があるのかを把握しやすくなります。
より正確に管理するには、設備ごとの使用量を把握し、継続的にデータを蓄積することが重要です。見える化ツールなどを活用することで、計算や管理の負担を軽減できます。
工場のカーボンニュートラルは、単なる環境対策ではなく、企業の競争力や取引維持にも関わる重要な取り組みです。省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用、生産プロセスの見直しなどを組み合わせて進めることが求められます。
一方で、効果的に進めるためには、まずエネルギー使用量やCO₂排出量を正確に把握することが欠かせません。効率的に見える化を進めるなら、「エネグラフ」の活用をご検討ください。CTクランプや流量計にエッジデバイスを取り付けるだけでデータを自動取得でき、クラウド上でエネルギー使用量をすぐに確認できます。
まずは必要な箇所から導入し、工場全体のエネルギー管理へと広げていきましょう。

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