コラム
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2025年11月4日
電気設備は、企業や工場、オフィスビルなどで電気を安全かつ効率的に利用するために欠かせない存在です。発電設備・送配電設備・構内電気設備の3つに大きく分けられます。しかし、老朽化や電圧変動、電力効率の低下など、さまざまな課題やトラブルが発生しやすいのも事実です。
本記事では、電気設備の基本的な種類と役割を解説するとともに、発生しやすい課題・トラブルとその解決法について詳しく紹介します。
目次
電気設備とは、電力を「発生・変換・供給・利用」するための装置や配線、機器などを総称したものです。発電所や工場、ビル、住宅などあらゆる場所に設けられ、電力の安定供給や安全な使用を支える重要なインフラです。
電力設備が供給側、電気設備が需要側のインフラという違いがあります。
電力設備は発電所や変電所など「電気を作り・送る」ための設備を指し、主に電力会社が所有します。一方、電気設備は工場やビルなど「電気を使う側」に設けられる設備を指すケースが多いです。
電気設備の主な3つの種類について紹介します。
発電設備とは、エネルギーを電力へ変換するための設備のことです。代表的なものに、火力・水力・原子力・風力・太陽光などの発電所があります。企業や工場などでも、自家発電機や太陽光パネルを設置して独自に電力を生み出すものは発電設備になります。
送配電設備は、発電所でつくられた電力を需要家へ安全かつ安定的に届けるための仕組みです。主に送電線、変電所、配電線、電柱、トランス(変圧器)などで構成されます。高電圧の電気を長距離にわたり効率的に輸送し、利用に適した電圧へ変換するのが主な役割です。
構内電気設備とは、工場やオフィス、商業施設などの建物内部に設置される電気設備のことです。分電盤、照明、空調、コンセント、非常用発電機、避雷設備などが含まれます。これらは日常的な業務や生産活動を支える基盤であり、万一トラブルが発生すると業務停止や安全面でのリスクにつながります。
電気設備で発生しやすい課題・トラブルを紹介します。
電気設備は長期間の使用により、部品や配線の絶縁劣化、接触不良、錆びなどが進行します。特に、設置から10年以上経過した設備では、設計当時の性能を維持できず、突発的な故障や発火事故を招くおそれがあります。
老朽化が進んだ設備を放置すると、稼働停止や製造ラインの停止といった深刻なトラブルにつながりやすく危険です。高圧受電設備や分電盤、ケーブルなどは、経年劣化が目視で確認しにくいため、専門業者による絶縁診断や熱画像診断を定期的に行うことが重要です。
突然の停電が発生すると、生産ラインやITシステムが停止し、データ消失や機器の損傷を引き起こすおそれがあります。特に、精密機器を扱う工場や医療機関、データセンターなどでは、わずかな電圧の乱れでも業務停止につながるケースは少なくありません。
近年は落雷や自然災害の増加、地域電力の逼迫による系統不安定化などが原因で、瞬時停電(瞬断)や電圧低下が発生することもあります。
電気設備の老朽化や不適切な運用によって、電力効率が低下し、エネルギーコストが増加します。例えば、照明や空調機器の過剰運転、モーターや変圧器の劣化などが原因です。電力効率が低下した状態を放置すると、より多くの電力を消費してしまいます。
特に工場や大型施設では、エネルギー消費の割合が大きく、電力効率の低下は利益率の低下に直結します。その他にも、機器の寿命を縮める原因になったり、二酸化炭素の排出量を高める原因になったりするため、見過ごせない問題です。
人的ミスや管理不足に電気設備のトラブルも少なくありません。代表的な例としては、ブレーカーの誤操作による停電や感電事故、配線作業のショートなどです。このような事故は、点検や操作手順を守っていない、教育不足が原因となるケースが多くあります。
特に作業内容が上手く共有できていないときや、慣れから安全確認を怠ってしまったときなどに発生しやすくなります。管理体制が属人的で、責任範囲が不明確な現場では、異常が発生しても初動が遅れやすくなることも少なくありません。
安全かつ安定した電力を供給するためには、電気設備の管理や定期的な更新が欠かせません。しかし、設備の維持や更新には多額の費用がかかるため、対応を後回しにしている企業も少なくありません。予算の都合上、一度に複数の設備を更新できず、優先順位をつけながら見送られるケースも多いです。
管理体制が整っていても、古い設備を使い続けていれば、故障や事故といったトラブルを防ぎきれません。特に、部品の劣化や性能低下が進んだ状態では、突発的な停止や生産ラインの損失につながるリスクがあります。
電気設備のトラブルを防ぐには、日常の点検から長期的な更新計画まで、段階的な対策を講じることが重要です。ここでは、企業が実践できる代表的な5つの対策を紹介します。
電気設備のトラブルを最小限に抑えるためには、定期的な点検と予防保全が欠かせません。破損や腐食など、目に見える劣化はわかりやすいですが、絶縁抵抗の低下や接触不良など、外見では判断しにくい異常も少なくありません。そのため、設備に異常がないかを定期的に点検し、早期発見・早期対応を徹底することが重要です。
また、トラブルが発生してから対策を講じるのではなく、未然に防ぐための「予防保全」の考え方も欠かせません。例えば、赤外線サーモグラフィによる異常発熱の検知や、絶縁診断装置による電流値の監視などが有効です。小さな兆候を把握しておくことで、停電や設備停止といった深刻なトラブルを回避できます。
点検記録をデジタル化して蓄積することで、設備の状態を継続的に把握できます。過去のデータをもとに劣化傾向を分析すれば、更新のタイミングを計画的に判断でき、結果として保守コストの削減にもつながります。
電気設備は時間の経過とともに劣化するため、設備の更新が必須です。設備ごとに耐用年数は異なりますが、目安として10年程度を検討時期とするとよいでしょう。耐用年数に関しては、国税庁が機器別の耐用年数を定めているので参考にしてください。
老朽化した機器を使い続けると、電力効率が悪化するだけでなく、故障や事故といったトラブルのリスクも高まります。だからこそ、計画的に古い設備を高効率機器へ更新することが望ましいです。設備更新には初期投資が伴いますが、長期的には維持費や電力コストを抑えられ、経営の安定化につながります。
また、設備更新に際しては補助金を活用できる場合があります。高効率変圧器(キュービクル含む)などは、国の「省エネルギー投資促進支援補助金」の対象となることがあり、設備費の1/3を補助する制度もあります。
関連記事:【2025年最新】中小企業に役立つ省エネ補助金をエリア・設備別に紹介
電気設備のトラブルの中でも、電力効率の低下は特に多く見られる問題です。トラブルを防ぐには、電力使用の「見える化」が効果的です。見える化を行えば、どの時間帯・部署・設備でどれだけ電力を消費しているかを把握でき、効率の悪い箇所を一目で特定できます。
近年では、エネルギーモニタリングシステムを導入し、リアルタイムで電力使用状況を確認できる企業も増えています。センサーで収集したデータを分析することで、異常値や過負荷の兆候を早期に発見でき、突発的な停電や設備トラブルを未然に防ぐことも可能です。
電力の見える化には、エネグラフがおすすめです。安価なエッジデバイスを設置するだけで、エネルギー使用量や異常をすばやく見つけられます。
電力効率の低下や設備の過負荷などを未然に防ぐには、エネルギーマネジメントシステム(EMS/BEMS)の導入が効果的です。EMSとは、電力の使用状況を自動で監視・分析し、最適なエネルギー運用を実現する仕組みのことです。
EMSを導入することで、設備ごとの電力使用状況をリアルタイムで把握でき、電圧の不安定化や過負荷といった異常を早期に検知できます。これにより、電力効率の低下を防ぐだけでなく、突発的なトラブルや停電を未然に防ぐことが可能です。また、過去のデータを分析することで、電気設備の稼働傾向や劣化兆候をつかみ、点検や更新時期の最適化にもつながります。
電気設備のトラブルを根本的に防ぐためには、専門知識を持つ外部業者による診断やコンサルティングも有効です。社内で日常点検を行っていても、電力効率の低下や絶縁劣化など、専門的な測定や解析が必要な異常は見逃されることがあります。
電気保安法人やエネルギーコンサルタントに依頼し、設備全体の健康状態を定期的にチェックしてもらうことが重要です。
電気設備は、企業の事業活動を支える重要なインフラです。しかし、老朽化や管理不足によってトラブルが発生すると、業務停止や事故につながるおそれがあります。特に、電力効率の低下や誤操作によるトラブルなどは、日常的に起こりやすい問題です。
こうしたトラブルを防ぐためには、定期点検や予防保全の徹底、電力使用の見える化などを組み合わせた総合的な管理が必要です。
エネグラフを活用すれば、電気設備の異常やエネルギー使用量全体を把握できます。その他にも、CO₂削減量が見えるので環境への配慮も可能です。ぜひご検討ください。

太平洋工業(株)新規事業推進部 営業企画グループ
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