コラム
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2026年2月17日
近年、電気料金の高騰がニュースで取り上げられる機会が増えています。背景として、燃料価格の上昇や国際情勢の影響が挙げられることが多いものの、それだけが原因とは限りません。電力は、JEPXと呼ばれる卸電力取引所で売買されており、契約する電力プランによっては、そこでの取引価格が電気料金に反映される仕組みになっています。
本記事では、JEPXの概要や取引の仕組み、市場の種類を整理したうえで、価格変動が電気料金にどのように関係しているのかを解説します。
目次
JEPXとは、日本国内で唯一、電力の卸売取引が行われている市場です。正式名称は「一般社団法人 日本卸電力取引所」で、電力を供給する事業者と調達する事業者が取引を行う場として運営されています。
以前は、地域ごとの大手電力会社が発電から小売までを一貫して担う体制が一般的でした。しかし電力自由化により、発電設備を持たない事業者でも小売市場へ参入することが可能になりました。
こうした背景から、事業者が電力を安定して確保するため、2003年にJEPXが設立されたのです。
JEPXの取引は会員制で、発電や小売といった電力関連事業者のみ参加可能です。取引は、1日を30分ごとの48コマに分けて行われます。時間帯ごとに、売り手と買い手が希望する価格と数量を提示し、オークション形式で入札が進みます。取引が成立すると、その時点で売買条件が合致した価格が確定する、というのが一般的な仕組みです。
JEPXでは、売り手と買い手の条件が一致した時点で取引が成立し、その際の価格を「約定価格」と呼びます。約定価格の決定には、主に次の3つの方式が採用されています。
売り手と買い手が提示した価格と電力量が一致したときに確定する取引成立価格です。各時間帯における卸電力取引の指標となり、JEPX価格として広く参照されます。
入札を締め切ったあと、すべての売り入札と買い入札をまとめて集計し、需給が一致する価格を約定価格として決定します。取引参加者は他者の入札内容を事前に確認できません。
売り入札と買い入札が合致した時点で、その場で取引が成立する方式です。価格が有利な入札が優先され、条件が同じ場合は、入札した時間が早いものから取引が成立します。
JEPXには、受け渡しのタイミングや取引目的に応じた複数の市場があります。JEPXで利用されている主な取引市場について紹介します。
スポット市場は、JEPXの中でも取引量が最も多く、電力価格の指標として重視されている市場です。翌日に受け渡す電力を対象としており、前日に入札を行うことから「一日前市場」と呼ばれることもあります。
取引は1日を30分ごとの48コマに分けて行われ、各時間帯に必要な電力量と価格を事業者が入札します。価格は、ブラインド・シングルプライスオークション方式によって決定され、需給が一致した水準がそのコマにおける取引価格として適用される仕組みです。
先渡市場は、将来の特定期間に受け渡す電力を、事前に決めた価格で売買する市場です。主に価格変動リスクを抑えたい事業者がリスクヘッジの手段として一定の役割を担っています。
先渡市場では、「週間型」「月間型」「年間型」といった期間区分があり、それぞれに「24時間型」や「平日昼間型」などの時間帯が用意されています。取引方式はザラ場方式です。売り手と買い手の提示条件が一致した時点で約定し、その価格で取引が成立します。
時間前市場は、スポット市場で成立した取引内容を、受け渡し直前まで調整できる市場です。主に、需要や供給の見込みにズレが生じた場合の調整手段として利用されます。スポット市場は前日に入札を行うため、当日の天候変化や設備トラブルなど、予測しきれない要因が発生することも少なくありません。
時間前市場では、こうした変化を踏まえ、電力の不足や余剰を補う取引が行われ、実需給に即した調整がしやすいことが特徴です。取引はザラ場方式で進み、売り手と買い手の条件が一致した時点で約定します。
ベースロード市場は石炭火力や原子力など、運転コストが比較的低く、安定的に稼働する電源を対象とした市場です。ベースロード電源は、従来は大手電力会社が多くを保有してきました。そのため、新電力にとっては調達が難しく、価格面で不利になりやすい状況が続いていました。
こうした課題を是正するため、競争環境の公平性を高める制度としてベースロード市場が設けられたのです。取引は年に4回実施され、翌年度1年分の電力をまとめて確保する仕組みです。価格はシングルプライスオークション方式で決まり、安定した調達を重視する事業者にとって重要な市場となっています。
非化石価値取引市場は、再生可能エネルギーや原子力など、化石燃料を使用しない電源が持つ「環境価値」を取引する市場です。電気そのものではなく、発電方法に由来する価値を切り出して売買することが特徴です。
この市場が設けられた背景には、再生可能エネルギーの利用拡大や、企業の脱炭素対応があります。小売電気事業者は、非化石価値を調達することで、供給する電力の非化石比率を高められます。非化石価値取引市場の取引は、主にオークション方式です。
JEPX価格が変動する主な理由について紹介します。
電力は30分単位で取引されており、それぞれの時間帯の需給状況が価格に直接反映されます。
例えば、工場やオフィスが稼働する日中は電力需要が高まりやすく、需要に対して供給が追いつかない場合は価格が上昇します。一方、深夜帯は電力使用量が少なく、供給に余裕が出やすいため、価格が低下するのが一般的です。
このように、JEPXでは需給の差がそのまま市場価格に反映されるため、時間帯ごとの価格変動が生じる仕組みになっています。
夏場は冷房需要が増え、気温が高い日ほど電力使用量が一気に伸びます。冬場も暖房機器の稼働が増えることで、需要が高まりやすくなります。特に、厳しい暑さや寒さが続くと、想定以上に電力需要が膨らむことが少なくありません。
一方で、供給側は急激に増やせるわけではありません。需要の増加に対して供給が追いつかない場合、需給が逼迫し、JEPX価格が上昇しやすくなります。
太陽光発電や風力発電は、天候や自然条件によって出力が大きく変わる電源です。晴天が続き、日射量が多い日は太陽光発電の出力が増えますが、天候不順や無風状態が続くと、発電量が想定を下回り、供給不足から価格が上昇しやすくなります。
JEPXの価格は、発電に使われる燃料価格や電力調達を取り巻く環境にも左右されます。火力発電は、日本の電力供給において依然として大きな割合を占めているためです。
例えば、LNGや石炭、石油といった燃料価格が上昇すると、発電コストも高くなります。その結果、発電事業者が提示する売り価格が引き上げられ、JEPX全体の価格水準が上がりやすくなります。為替の変動や国際情勢の影響を受けやすいことも特徴の一つです。
JEPX連動型契約とは、卸電力市場であるJEPXの市場価格を基準に、電気料金が決まる契約形態です。固定単価のプランとは異なり、市場価格の変動がそのまま電気代に反映されることが大きな特徴です。
工場向けの電気料金プランでは、一般的に使用電力量が多く、時間帯による負荷の差が大きくなるケースが見られます。そのため、JEPX価格が高騰する時間帯に電力使用が集中すると、電気代が想定以上に膨らむ可能性があります。一方で、市場価格が低い時間帯をうまく活用できれば、調達コストを抑えられる場合もあります。
JEPX連動型契約は、価格変動リスクを伴うものの、電力使用の実態を把握し、運用を工夫することでメリットを引き出せる契約です。工場の電気料金を見直す際は、契約内容だけでなく、JEPX価格との関係性を理解したうえで検討することが重要になります。
JEPX連動型契約は、市場価格の変動が直接反映されるため、使い方次第で電気代が大きく変わる契約です。そのため、JEPX連動型契約の特性を活かすためには、価格変動を前提とした電気代の管理が重要です。
JEPX連動型契約では、毎月の請求書に記載された金額だけを見ても、電気代が増えた理由や下がった理由を正確に把握できません。そのため、電気代が想定より高くなっても、具体的な改善ポイントが見えにくくなります。請求書だけに頼らず、時間帯ごとの電力使用状況を把握することで、電気代増減の原因が明確になります。
JEPX連動型契約では、価格が高い時間帯に、消費電力量の大きい設備の稼働を抑えることが重要です。ただし、設備ごとの消費電力量を把握していない場合、どの設備の稼働を見直すべきか判断できません。
仮に、価格が高い時間帯に稼働していても、消費電力量が小さい設備であれば、電気代への影響は限定的です。一方で、消費電力量の大きい設備が高価格帯で稼働していれば、電気代は大きく膨らみます。
そのため、時間帯をずらすべき設備や、優先的に見直すべき設備を判断するには、設備ごとの電力使用量を把握することが欠かせません。
JEPX連動型契約では、電気代を適切に管理するために電力使用状況の見える化が欠かせません。市場価格だけを追いかけても、自社の使い方が分からなければ、具体的な対策につなげにくいためです。
電気の見える化にはいくつかの方法があります。例えば、検針データや請求データを基に、Excelで時間帯別の使用量を整理する方法もあります。ただし、手作業での集計や更新が必要になるため、負担が大きい場合は継続が難しくなりがちです。
重要なのは、無理なく続けられる方法から始めることです。最初から完璧な管理を目指すのではなく、時間帯別の使用量を把握するなど、基本的な情報を押さえるだけでも効果はあります。
JEPX連動型契約では、市場価格の変動が電気代に反映されるため、価格の仕組みと電力使用状況をあわせて管理することが重要です。特に工場では、価格が高い時間帯に消費電力量の大きい設備が稼働していないかを把握することが欠かせません。
そのためには、電力使用量の見える化を行い、無理なく続けられる方法で管理することがポイントです。エネグラフを活用すれば、時間帯別の使用状況を把握しやすくなり、JEPX連動型契約における電気代管理にも役立ちます。

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