コラム
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2026年1月12日
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、工場やオフィスのエネルギー使用状況を可視化し、省エネやコスト削減につなげるための仕組みです。電力料金の高騰や脱炭素経営の重要性が高まるなか、多くの企業がエネルギー管理の高度化に取り組んでいます。
本記事では、EMSの基本概念や仕組みをはじめ、導入メリットや注意点、実際の導入手順をわかりやすく解説します。さらに、業種別の導入事例や活用できる補助金制度なども紹介していますので、参考にしてください。
目次
エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、建物や工場で使用する電気・ガスなどのエネルギーを計測し、最適な運用へ導く管理システムのことです。
エネルギーの見える化や自動制御を通じて、省エネとコスト削減を実現します。エネルギーマネジメントシステムが注目される背景や種類について詳しく紹介します。
エネルギーマネジメントシステムは、エネルギー使用量を把握しながら設備の運転を最適化するための管理基盤です。建物内で使われる電気やガスの動きを詳細に記録し、分析結果をもとに運用改善へつなげます。使用状況を把握するだけでなく、省エネ施策の実施や設備制御まで一体的に行える点が特徴です。
エネルギーマネジメントシステムは、主に次の流れでエネルギー管理を進めます。
・設備に取り付けたセンサーやメーターで電力・ガスなどの使用量を取得
・現場の消費量をリアルタイムで把握できる
・取得データをクラウドや管理ソフトに集約
・時間帯や設備別の使用パターンを分析し、無駄の発生ポイントを可視化
・分析結果をもとに空調や照明などの運転を自動調整
・ピークカットや過剰運転の抑制につながる
電力需給の逼迫が続き、エネルギー価格が高止まりしている状況では、安定した操業を維持するための効率的なエネルギー運用が欠かせません。エネルギーを必要な分だけ使う仕組みを整えることは、経営上の重要課題になりました。
脱炭素化の流れも大きな要因です。政府や自治体はカーボンニュートラルを掲げ、企業にも温室効果ガスの削減を求めています。このような社会的要請が強まる中で、エネルギーの使用状況を定量的に把握し、改善を継続する仕組みが必要とされています。
エネルギーマネジメントシステムには、対象となる建物や設備の規模によって複数の種類があります。それぞれの特徴を見ていきましょう。
商業ビルやオフィスで使われ、空調・照明・換気設備の運転状況を管理します。エネルギーの使用量を建物単位で把握でき、ピーク負荷の抑制や最適運転に役立ちます。
主に家庭向けの管理システムです。家電や給湯設備の使用状況を可視化し、省エネ行動を促す役割を担います。太陽光発電や蓄電池と連携させることで、住宅のエネルギー自給率を高められます。
工場や生産ラインを対象にした管理システムです。工程ごとの使用量を詳細に分析でき、生産設備のムダを見つけやすくなります。製造業の省エネ対策では中核を担う仕組みです。
小規模施設向けに設計された管理システムです。中小工場や小規模ビルなど、多様な用途で導入できます。複雑な機能を抑えつつ必要なデータを取得できる点が特徴です。
地域全体のエネルギー需給を管理する仕組みです。太陽光発電や蓄電池を組み合わせ、エリア全体でエネルギーを最適に運用します。再生可能エネルギーの普及に伴い重要性が増しています。
エネルギーマネジメントシステムを導入すると、エネルギーの使用状況を正確に把握でき、省エネ対策を効率よく進められます。その他にも多くのメリットがありますので、詳しく見ていきましょう。
エネルギーマネジメントシステムを導入すると、設備ごとのエネルギー使用量を細かく把握できるようになります。消費量をグラフや数値で確認できるため、時間帯による負荷の偏りや、必要以上に稼働している設備の存在が一目で分かります。
エネルギーの使われ方が明らかになることで、無駄が生じている箇所を特定しやすくなり、改善の方向性も判断しやすいことがメリットです。
エネルギーマネジメントシステムは、取得したデータを基に設備の運転を最適化できる点が大きな特徴です。
単に使用量を可視化するだけでなく、運転状況を分析することで、どの設備をどの時間帯に稼働させるべきかを判断できます。効率の低い運転が続いていた場合でも、改善が必要な箇所を具体的に把握できるため、無理のない省エネ対策につながります。
エネルギーマネジメントシステムを導入すると、設備ごとの電力使用量を詳細に確認できるため、どの機器がエネルギーを多く消費しているのかを把握しやすくなります。
稼働状況をデータで追えるようになることで、性能が低下している機器や、必要以上に負荷がかかっている設備の発見につながります。目視では気づきにくい異常も数値の変化から読み取れるため、早めの対策が可能です。
エネルギーマネジメントシステムは、CO₂排出量の把握や削減計画の策定に役立つため、脱炭素経営を進める企業にとって重要な基盤になります。エネルギー消費の内訳が明確になることで、排出量の多い工程や設備がわかり、重点的に対策を講じやすくなります。改善の成果もデータで示せるため、環境への取り組みを外部へ発信しやすいこともメリットです。
ESG投資が広がる中で、環境配慮は企業価値を左右する要素になりました。透明性のあるエネルギー管理は、取引先や投資家からの信頼につながります。
エネルギーマネジメントシステムには多くのメリットがありますが、導入時には注意が必要なこともあります。エネルギーマネジメントシステムの課題やデメリットについて見ていきましょう。
エネルギーマネジメントシステムを導入する際は、計測機器の設置やネットワーク環境の整備などに初期費用が必要になります。規模が大きくなるほど導入コストも増えるため、費用対効果を明確にすることが欠かせません。また、導入後もシステムの保守やデータ管理に一定の運用コストがかかります。分析を継続するための人材の確保も必要です。
初期費用が気になる方は、導入時に補助金制度を活用できないか検討してみましょう。
関連記事:【2025年最新】中小企業に役立つ省エネ補助金をエリア・設備別に紹介
エネルギーマネジメントシステムを導入する際は、既存設備との連携が課題になるケースがあります。設備が古い場合、データを取得するためのインターフェースが備わっていないことがあり、追加の計測機器を取り付ける必要が生じます。設備ごとに通信方式や制御仕様が異なると、システム側で対応できないこともあるので注意しましょう。
エネルギーマネジメントシステムを十分に活用するためには、データの読み取りや改善策の立案に関する専門的な知識が欠かせません。設備の稼働特性や電力の仕組みを理解していないと、適切な改善策を選びにくくなることも課題です。
社内で対応が難しい場合は、外部の専門家に支援を依頼するケースもあります。分析体制が整っていない企業では、導入後の運用が滞り、期待した効果が出にくくなることがあるため、事前に必要なスキルや役割を整理しておくことが重要です。
エネルギーマネジメントシステムを効果的に導入するには、設備の状況を把握しながら段階的に準備を進めることが重要です。どのような流れで進めていけばいいか、導入の手順を紹介します。
エネルギーマネジメントシステムを効果的に活用するためには、導入前の社内体制づくりが欠かせません。まず、エネルギー管理の責任者と担当者を明確にし、役割を整理する必要があります。
省エネの目的や達成したい指標を共有し、部署間で協力しやすい環境を整えることも重要です。
エネルギー管理を始める際は、どの設備を優先して見える化するかを決めることが重要です。使用量が多い設備や、稼働時間が長い機器を対象にすると、改善効果を得やすくなります。
また、空調や照明などの共通設備は消費量が大きく、全体の最適化に影響しやすいため、早い段階で計測対象に含めると効果的です。設備の配置や電源ルートも合わせて確認し、計測ポイントを設定しやすい範囲から取り組むと導入がスムーズに進みます。
エネルギー使用量を正確に把握するためには、どこに計測機器を設置するかを明確にする必要があります。分電盤や主要設備の近くなど、使用量の変化を正しく捉えられる位置を選ぶことが重要です。計測ポイントを適切に設定すれば、設備ごとの負荷を正確に把握でき、分析の精度も高まります。
データ分析は、省エネ施策の優先順位を決める上でも重要な工程です。エネルギー使用の傾向を把握することで、どこに無駄があるのか、どの設備が負荷を増やしているのかを客観的に判断できます。また、異常値や急激な増加が見られた場合は、設備の不具合や運用の問題を早期に発見する手がかりになります。
分析結果を踏まえたうえで、省エネの目標を具体的に設定しましょう。削減したいエネルギー量や改善したい時間帯を明確にすることで、取り組むべき施策が整理されます。設備の運転時間を調整する方法や、設定温度の見直しなど、すぐに着手できる対策から実行すると効果が出やすいです。
エネルギーマネジメントシステムの効果を長期的に維持するためには、PDCAサイクルを継続的に回すことが欠かせません。施策を実行した後は、データを確認し、改善効果がどの程度出ているのかを評価します。
結果を踏まえて対策を修正すれば、より効率的な省エネへ近づきます。また、新たな課題が見つかる場合もあるため、状況に応じて施策を追加することが大切です。
エネルギーマネジメントシステムの導入事例を紹介します。事例を見ることで、自社で導入した場合の改善ポイントを具体的にイメージしやすくなります。
エネルギー供給事業者がEMSを導入した事例について紹介します。
【導入の経緯】
同社はISO14001の運用を続ける中で、省エネ法改正や東京都条例によるCO₂削減義務への対応が課題になっていました。主要設備の更新時期が重なる状況もあり、更新計画の評価やエネルギーセキュリティの強化が求められるようになりました。こうした背景から、より体系的なエネルギー管理を実現するためにEMS導入を決めたという流れです。
【行動計画(施策)】
・冷凍機更新工事を計画し、予定通りに完了
・効率運転の方法を整理し、手順書を作成
・都条例のトップレベル基準への対応策を検討
・ボイラーや冷凍機など主要設備の最適化を推進
【活動の成果】
・冷凍機更新の効果もあり、エネルギー原単位を10%低減
・従業員の省エネ意識が高まり、改善活動が活発化
・データに基づく改善提案が通りやすくなり、運用改善が進展
製造業の事業所がEMSを導入した事例について紹介します。
【導入の経緯】
同社はCO₂削減を強化する方針のもと、次世代ファクトリーの実現を目指してエネルギー管理の高度化に着手しました。ISO50001の取得を視野に入れ、BCP対策や分散型エネルギーの活用を進めながら、効率的な運用を可能にする管理基盤の構築を検討しました。
【行動計画(施策)】
・電力計測のため約900カ所にメーターを設置
・太陽光発電・蓄電池設備を導入
・FEMSで空調制御と電力の可視化を実施
・ボイラーの燃料転換や配管配置の最適化
・照明や空調の高効率化を継続して推進
【活動の成果】
・電力コストが約13%削減
・リアルタイム監視により省エネ意識が社内に定着
・経営層から現場まで共通の課題認識が生まれた
小売業がエネルギーマネジメントシステムを導入した事例について紹介します。
【導入の経緯】
東日本大震災で電力供給が途絶え、食品廃棄を余儀なくされた経験から、同社はBCPとエネルギー管理の強化を最重要課題と位置付けました。社内には既にエネルギーデータを扱う基盤があり、それを整理しながら全社規模の管理体制を構築した流れです。
【行動計画(施策)】
・店舗照明のLED化など、グループ共通の省エネ施策を実施
・エネルギー管理教育を整備し、従業員の力量を強化
・エネルギーレビューを体系化し、使用量の実績把握を標準化
・主要4社のエネルギーを毎月モニタリングし、改善に活用
【活動の成果】
・店舗運営に直結する省エネ活動が広がった
・店舗スタッフまで意識が浸透し、運用改善が進行
・導入直後で数値効果は限定的だが、目標達成への期待が高まった
空調機メーカーがEMSを導入した事例について紹介します。
【導入の経緯】
同社は環境負荷の低減を重要テーマとして掲げ、生産拠点全体で省エネ活動を進めてきました。より高い改善効果を得るため、ISO50001に基づく体系的なエネルギーマネジメントへ移行した流れです。
【行動計画(施策)】
・エネルギー使用量の分析と部門別の重点領域の特定
・圧縮機ラインの蒸気レス化や高効率ボイラー更新
・LED照明化や熱交換器の効率改善などの省エネ対策
・部門ごとの改善案を整理し、優先度を設定
・エネルギーマネジメントマニュアルの策定
【活動の成果】
・エネルギー原単位が前年比9.1%改善
・約1,800万円相当のコスト削減効果を確認
・ピーク電力対策が整備され、柔軟な節電対応が可能に
・エネルギーレビューの定着により、担当者の意識が向上
エネルギーマネジメントシステムの導入では、設備更新や計測機器の設置に費用がかかるため、補助金を活用することで負担を軽減できます。国の支援制度だけでなく、自治体ごとの助成金が用意されている場合もあります。
省エネルギー投資促進支援事業費補助金は、工場や事業場における省エネ設備への更新を支援する制度です。高効率なユーティリティ設備や生産設備への入れ替え、さらには先進的な省エネ技術を用いた設備導入を対象としています。
複数年度にわたる投資にも対応しており、納期遅延などで単年度の導入が難しい企業にも利用しやすい仕組みです。
【補助率・上限額】
・省エネ設備更新枠:補助率 1/3以内 / 上限額 1億円
・先進的省エネ設備等導入枠:補助率 中小企業10/10・大企業3/4以内 / 上限額 15億円
参考元:令和8年度省エネルギー投資促進支援事業費補助金(2026年度・省エネ補助金)
自治体が実施する省エネ補助金は、事業者がエネルギー効率の高い設備へ更新しやすくするための制度です。空調や照明の高効率化、断熱改修、エネルギーマネジメントに関わる機器の導入など、幅広い取り組みが対象になります。
国の補助金と併用できる場合もあり、設備更新に伴う初期費用を大幅に抑えられることがメリットです。また、中小企業向けの枠を独自に用意している自治体も多く、事業規模に応じた支援を受けやすい環境が整っています。例えば、東京都では以下のような補助金を設けています。
【東京都:LED照明等節電促進助成金】
・対象設備 LED照明器具、デマンド監視装置、進相コンデンサ、インバータ
・助成率 1/2以内
・助成上限額 1,500万円(下限30万円)
・対象内容 購入および設置費用
参考元:LED照明等節電促進助成金
エネルギーマネジメントシステム(EMS)に関するよくある質問を紹介します。
エネルギーマネジメントシステムの市場は、脱炭素化の加速とエネルギー価格の高騰を背景に拡大を続けています。
国内では、省エネ法の強化や企業の環境経営の広がりにより、製造業から商業施設まで導入が進んでいます。特に、電力の見える化や自動制御へのニーズが高まり、EMS関連サービスの需要が増えている状況です。
エネルギーマネジメントシステムと蓄電池は非常に相性が良く、組み合わせることでエネルギー運用の効率が大きく向上します。蓄電池は電力を貯めて必要なときに放電できるため、ピークカットや電力料金の抑制に効果があります。
EMSと連携させることで、放電タイミングや充電量を自動で最適化でき、無駄のないエネルギー運用が可能です。また、再生可能エネルギーの活用とも相性がよく、太陽光発電で余った電力を蓄え、夜間や停電時に活用することもできます。BCP対策としても有効で、安定した電源確保に貢献します。
ISO 50001は、エネルギー管理を継続的に改善するための国際規格です。この規格はエネルギー使用量の把握、改善目標の設定、施策の実行、効果検証までを体系的に進める仕組みを示しており、企業がエネルギー管理を組織的に行うための指針となります。
EMSは、このISO 50001で求められる管理サイクルを実務レベルで支える役割を担い、データ収集や分析、制御などを効率的に行える環境を整えます。
主に使用されるのは、電力計や流量計などの計測機器で、設備ごとのエネルギー使用量を細かく把握するために設置されます。取得したデータはゲートウェイや通信端末を通じてサーバーへ送られ、管理ソフトで分析されます。
必要に応じてデマンド監視装置や環境センサーを併用し、負荷の急上昇を検知して運転を調整することも可能です。
エネルギーマネジメントシステムは、エネルギー使用量を見える化し、設備運用を最適化するための重要な仕組みです。導入することで無駄な消費を抑えられ、省エネ効果やコスト削減が期待できます。
エネグラフは、使用量の変化を見える化し、改善点抽出をサポートします。詳細な見える化をワンストップで提供し、エネルギー管理をより効率的に進めることが可能です。

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