コラム
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2025年12月22日
省エネ法では、一定以上のエネルギーを使用する企業を「特定事業者」と定め、報告書の提出や管理体制の整備を義務づけています。自社が該当するかどうかを正しく判断するためには、定義や区分を理解したうえで、必要な書類や取り組み内容を把握することが欠かせません。本記事では、特定事業者の基準と義務に加えて、日常の省エネ活動として取り組むべきポイントも紹介します。
目次
省エネ法における特定事業者の定義や区分、特定連鎖化事業者との違いについて紹介します。
特定事業者とは、省エネ法に基づきエネルギー使用量が一定基準を超える企業を指す区分です。年間のエネルギー使用量が原油換算で1,500kL以上になると指定され、事業全体で使用する電力や燃料を合算して判断されます。
また、単独の事業所だけでなく、関連会社や複数の拠点をまとめて審査される点も特徴です。指定された企業は、エネルギー管理体制の整備や報告書の提出など、法律で定められた義務に取り組む必要があります。エネルギー使用量の大きい企業が効率的に省エネを進めるための仕組みとして運用されています。

出典:特定事業者向け情報 | 工場・事業場の省エネ法規制 | 事業者向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト
前述のとおり、事業者全体の年間エネルギー使用量が原油換算1,500kL以上になると「特定事業者」に指定されます。一方、フランチャイズチェーン本部が管理する加盟店全体のエネルギー使用量を合算し、1,500kL以上になる場合は「特定連鎖化事業者」に該当します。小売や飲食など、全国に拠点が広がる事業者が該当しやすい区分です。
また、単独の工場で年間3,000kL以上使用する場合は「第一種エネルギー管理指定工場等」、単独で1,500kL以上の場合は「第二種エネルギー管理指定工場等」に分類されます。
省エネ法における特定事業者は、エネルギー使用量を適切に管理するために、複数の書類を国へ提出する義務があります。書類の種類は、事業者の指定状況や管理体制によって異なります。提出時期も法令で定められており、期限を守らない場合は行政指導の対象となるため注意が必要です。
エネルギー使用状況届出書は、特定事業者が毎年度のエネルギー使用量を国へ報告するための書類です。電力やガス、燃料など、企業全体で使用したエネルギーを原油換算で集計し、所定の様式にまとめて提出します。
届け出の対象は、前年度のエネルギー使用量が一定基準を超える事業者です。提出期限は、原則として毎年5月末とされています。
特定事業者や特定連鎖化事業者の指定要件を満たさなくなった場合は、指定取消申出書を提出します。この申出書は、年間エネルギー使用量が基準である原油換算1,500kLを下回ったときに必要です。
提出先は所管の経済産業局で、指定解除の判断は国が行い、取消の申請が認められると特定事業者としての義務がなくなります。
第一種エネルギー管理指定工場や第二種エネルギー管理指定工場の基準を下回った場合は、指定取消申出書を提出します。第一種は単独の工場・事業場で年間3,000kL以上、第二種は1,500kL以上のエネルギー使用量が基準です。
設備更新や稼働内容の変更によって使用量が減少し、基準を継続して下回る状態になったときや、事業を行わなくなったときに申請の対象になります。申出が認められれば、管理指定工場としての義務は解除されます。
エネルギー管理統括者(企画推進者)選任・解任届出書は、特定事業者がエネルギー管理体制を整備するために提出する書類です。エネルギー管理統括者は、企業全体の省エネ方針を策定し、管理計画を推進する役割を担います。
選任した際や担当者が変更になった際には、所定の様式に記入して所管の経済産業局へ届け出が必要です。届出は選任または解任など、事由が生じた日以降の7月末日までに提出します。
エネルギー管理者(管理員)選任・解任届出書は、特定事業者や管理指定工場において、エネルギー使用量の実務管理を担う担当者を任命した際に提出する書類です。エネルギー管理者は、設備の運転状況の点検や使用量データの把握、省エネ措置の実施など、現場レベルでの管理を担当します。選任や解任など、事由が生じた日以降の7月末日に提出します。
中長期計画書は、特定事業者が一定期間にわたり取り組む省エネ目標と実施内容を示すための書類です。省エネ法では、事業者がエネルギー使用量の削減を計画的に進めることを求めており、その根拠となるのが中長期計画書です。
計画には、今後の削減目標、具体的な施策、投資予定、管理体制などを記載します。原則毎年度7月末日までに提出が必要ですが、優良な事業者は一部条件を満たすことで提出が免除されます。
定期報告書は、特定事業者が毎年度のエネルギー使用量や省エネの取り組み状況を国へ報告するための書類です。報告内容には、事業者全体のエネルギー使用実績、削減に向けた実施状況、設備更新の内容などが含まれます。
提出先は所管の経済産業局で、期限は原則として毎年7月末です。前年度の取り組みを振り返り、省エネ計画の達成度を確認する重要な書類となっています。
特定事業者は、省エネ法に基づきエネルギー管理を適切に進めるための複数の義務が課されています。義務の内容は、管理体制の整備から書類の提出、計画の策定まで多岐にわたります。省エネ法における特定事業者が対応すべき法的義務について見ていきましょう。
特定事業者には、省エネ管理を適切に進めるための担当者を選任する義務があります。まず、企業全体の省エネ方針を統括する役割として「エネルギー管理統括者」を任命します。統括者は、省エネ計画の作成や管理体制の整備を主導し、社内の取り組みを調整する立場として重要です。
あわせて、各事業所で省エネの実務を担当する「エネルギー管理者(管理員)」も選任します。管理員は設備の運転状況の確認やデータの把握、現場の改善活動など、具体的な管理業務を担当します。
特定事業者は、毎年度のエネルギー使用量を国へ報告するために、エネルギー使用状況届出書を提出する義務があります。電力やガス、燃料など、事業者全体で使用したエネルギーを原油換算で集計し、所定の書式にまとめて届け出ます。
届出内容は国が省エネの取り組み状況を把握するための重要な資料になるため、正確なデータの収集と記載が必要です。
特定事業者には、省エネの取り組み結果をまとめた定期報告書を毎年提出する義務があります。報告書には、前年度のエネルギー使用量の実績や設備改善の内容、省エネ措置の進捗状況などを詳しく記載します。提出期限は原則として毎年7月末です。
定期報告書は、国が各事業者の省エネ取り組みを評価する際の重要な資料になります。内容に不備があると行政指導の対象になる可能性があるため、正確なデータと根拠に基づいて作成することが求められます。
特定事業者は、省エネを計画的に進めるために中長期計画書を作成し、国へ提出する義務があります。計画書には、今後のエネルギー削減目標、設備更新の方針、省エネ施策の内容などを記載します。
提出後は、計画に基づいた取り組みを継続的に実施し、進捗を定期的に確認し、計画と実績の差が大きい場合は、改善点を洗い出して内容を見直すことが必要です。
第一種または第二種エネルギー管理指定工場に該当する場合は、特定事業者とは別に追加の義務が課されます。第一種は単独の工場で年間3,000kL以上、第二種は1,500kL以上のエネルギーを使用する事業場です。
指定を受けると、事業場単位でエネルギー管理者を選任し、使用量の把握や設備管理を強化する必要があります。また、事業場ごとの省エネ計画の策定や実施も求められます。
特定事業者は、法令で求められる義務を履行するだけでなく、エネルギー使用量を継続的に削減するための実効的な取り組みが求められます。省エネ法における特定事業者として取り組むべきポイントを紹介します。
特定事業者として省エネを確実に進めるには、組織的な管理体制を整えることが重要です。まず、企業全体の省エネ方針を統括するエネルギー管理統括者を任命します。統括者は省エネ活動の方針づくりや社内調整を行う役割を担います。
あわせて、各事業所には現場の管理を行うエネルギー管理者(管理員)も必要です。管理者は設備の運転状況の点検や改善活動の実施を担当します。役割分担を明確にすることで、組織全体で省エネを進める体制が整います。
担当者の選任後は、必要な届出を期限内に提出し、法令に沿った管理体制を維持することが大切です。継続的な体制の見直しも、省エネ効果を高めるうえで欠かせません。
省エネを効果的に進めるためには、エネルギー使用量のデータを正確に把握する仕組みを整えることが欠かせません。まず、電力・ガス・燃料などの使用量を定期的に計測し、原油換算で一元的に管理します。データを細かく記録することで、使用量の増減や異常値を早期に把握できます。
また、計測デバイスやエネルギー管理システムを導入すれば、リアルタイムでの監視や自動集計が可能です。集めたデータを分析することで、省エネ対策の効果や改善すべきポイントが明確になります。
特定事業者が省エネを効果的に進めるには、策定した計画を着実に実行し、改善サイクルを回すことが重要です。まず、中長期計画や年度計画に基づき、設備更新や運用改善などの施策を実施します。
実施後は、エネルギー使用量の変化や設備の稼働状況を確認し、計画との乖離を評価します。こうしたPDCAサイクルを継続的に回すことで、省エネの精度が高まり、効果を安定して得られるでしょう。
計画と実績を定期的に見直す姿勢が、省エネ法で求められる管理体制の維持にもつながります。事業者として継続的に改善できる仕組みを整えることが大切です。
省エネ効果を高めるには、計画だけでなく具体的な対策を現場で実行することが重要です。まず、照明や空調の高効率機器への更新は効果が大きく、老朽設備の見直しにもつながります。設備の稼働時間を適切に管理したり、不要な待機電力を削減したりする運用改善も有効です。
また、断熱性能の向上や熱の再利用など、建物全体の省エネ性を高める施策もあります。工程の見直しや生産ラインの効率化によって、電力使用量を抑える方法も検討できます。これらの対策を継続的に組み合わせることで、省エネ効果を安定して得られますので、実施状況を記録し改善に活用することが大切です。
特定事業者として省エネを進めるうえでは、法令で定められた義務を確実に守る姿勢が欠かせません。まず、書類の提出期限を守ることが重要です。期限を過ぎると行政指導の対象になる可能性があります。
また、担当者の変更を届け出ていない、使用量データの集計に誤りがある、といった管理体制上の不備にも注意が必要です。計画を作成しても実行が追いついていなければ、省エネ法が求める基準を満たせません。
さらに、義務を正当な理由なく怠った場合には法的措置がとられる可能性があります。最初は指導や助言が行われ、改善が見られない場合は是正勧告や命令に進みます。命令違反や虚偽報告のような重大なケースでは、罰則が科されることがあります。
過去には報告未提出による企業名公表の例もあるため、日頃から確実な管理を行うことが大切です。
省エネ法における特定事業者に関するよくある質問を紹介します。
特定事業者の一覧は、経済産業省の資源エネルギー庁が毎年公表しています。公開されるのは「特定事業者・特定連鎖化事業者等の指定状況」で、一覧はExcel形式で入手できます。開示される情報は毎年7月末時点の指定状況で、更新頻度は年1回です。
省エネ法では、特定事業者の取り組み状況を評価するために「ランク評価制度」が設けられています。ランクは、省エネの実績や計画達成度などを基に評価され、S・A・B・C の4段階です。
・Sクラス:優良事業者
・Aクラス:さらに努力が期待される事業者
・Bクラス:取り組みが停滞している事業者
・Cクラス:要注意事業者
この評価は、経済産業省の資源エネルギー庁が毎年行うもので、提出された定期報告書などを基に総合的に判断します。評価結果のうち、公表されるのはSクラス(優良事業者)だけで、A〜Cクラスは非公表です。優良事業者のみを公開することで、積極的な省エネの取り組みを広く周知し、他の企業に参考にしてもらう狙いがあります。
特定事業者の数は、資源エネルギー庁が毎年公表している「特定事業者等指定状況」で確認できます。公開されているデータは、毎年7月末時点の指定状況をまとめたものです。
特定事業者、特定連鎖化事業者、第一種・第二種エネルギー管理指定工場などが区分ごとに掲載されています。指定される事業者数は、年度によって増減がありますが、エネルギー使用量の大きい業種を中心に一定数が毎年指定されています。
省エネ法における特定事業者は、年間のエネルギー使用量が一定基準を超える企業として指定され、省エネ管理を重点的に進める役割を担います。
指定されると、管理統括者や管理員の選任、エネルギー使用状況届出書や定期報告書の提出など、複数の法的義務が発生します。さらに、中長期計画書の作成や工場単位での管理など、事業内容に応じた追加の義務への対応も必要です
エネルギー使用状況を正しく管理するためには、電力の見える化が欠かせません。エネグラフでは、安価なエッジデバイスを設置するだけで簡単にエネルギー使用量を把握できる為おすすめです。

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