コラム
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2025年12月22日
コンビニは24時間稼働する設備が多いため、電気代に悩む運営者の方は少なくありません。店舗の規模や導入している機器によって電気代は大きく変わりますが、相場を把握しておけば自店舗の電気代が適正かどうか判断しやすくなります。
本記事では、1か月あたりの電気代の目安に加えて、節電につながる設備ごとの対策をわかりやすく紹介します。
目次
コンビニの1か月あたりの電気代は、おおむね30万円前後とされています。東京都環境局が2013年に公表した資料では、都内のコンビニ1店舗あたりの年間電気代は平均約334万円と示されており、月に置き換えると約27.8万円になる計算です。
売り場面積が100~250㎡の店舗が全体の大半を占めるため、この規模では月12万~25万円ほどに収まるケースもあります。ただし、これらのデータは公開時期が古く、現在の電力料金と必ずしも一致するとは限りませんのでご注意ください。。
新しいデータを基に計算すると、コンビニ1店舗あたりの電気代はおよそ月30〜40万円が目安です。経済産業省の資料では、1店舗当たりの年間エネルギー消費量が2014年度の162,244kWhから2022年度には144,131kWhへ減少したと示されています。
省エネ機器の普及により電力使用量は減少していますが、一方で基本料金の上昇や再エネ賦課金などの影響により、電気料金単価は上昇傾向にあります。そのため、使用量が減っても電気代は以前より高くなるケースが多い点に注意が必要です。
今回のシミュレーションでは、東京電力の法人向け料金を想定し、年間消費量や契約電力をモデルケースとして算出しています。なお、料金単価は燃料価格や制度変更によって変動するため、あくまで目安としてご覧ください。計算に使用した主な前提は以下のとおりです。
・東京電力(法人契約:ベーシックプラン)
・基本料金(1kw):3,030円
・電気料金(1kWh):16円56銭
・1店舗当たりエネルギー消費量:144,131 kWh (2022年度)
・再生可能エネルギー発電促進賦課金単価:3.98円/kWh
・燃料費調整単価(2025年12月分):-1.41円/kWh
参考元1:東京電力|電気料金単価表
参考元2:経済産業省|2050年カーボンニュートラルに向けたコンビニエンスストア業界のビジョン(基本方針等)
コンビニの電気代は、店舗内の主要設備が大きな割合を占めています。電気代を抑えるためには、どの設備に負荷がかかっているのか把握することが重要です。
冷蔵・冷凍設備は、コンビニの電力使用量の中で最も大きな割合を占める設備です。ビルインタイプの店舗では約32%、単独店舗では約40%を占めるとされ、店舗全体の電力負荷を大きく左右します。
食品の鮮度保持や法令上の温度管理が求められるため、昼夜を問わず連続稼働する必要があります。主な設備は以下の通りです。
・バックヤードの保管用冷蔵庫・冷凍庫
・冷蔵食品用ショーケース
・冷凍食品用ショーケース
・コールドドリンク用ショーケース
これらの機器は、庫内温度を一定に保つために常にコンプレッサーが稼働しており、外気温の影響も受けやすい設備です。特にショーケースは開放型やガラス扉型など種類が多く、構造によって必要な冷却負荷が変わります。
加熱保温設備は、ビルインタイプでは約12%、単独店舗では約19%を占めるとされ、販売している温かい商品の種類や数量によって使用比率が大きく変わる点が特徴です。これらの設備は商品を一定温度で維持する必要があるため、稼働中は継続的に電力を消費します。主な設備は以下の通りです。
・ホットドリンクのショーケース
・フライヤー、電子レンジ
・おでんウォーマー
・中華まんや揚げ物などのショーケース
・コーヒーマシン
フライヤーや電子レンジのように短時間で高温を必要とする機器は瞬間的な電力負荷が高くなりやすい一方、ショーケースやおでんウォーマーのように一定温度を保つ機器は長時間稼働の影響で使用比率が高まる傾向があります。
空調設備は、コンビニの電力使用量において大きな割合を占める設備の一つです。ビルインタイプでは約21%、単独店舗では約17%を占めるとされ、季節や外気温の影響を受けやすい点が特徴です。特に来店客が多い時間帯や外気温が極端に高い日には負荷が増えやすく、店舗環境に応じて使用比率が変動します。主な設備は以下の通りです。
・夏季の冷房(売り場・バックヤード)
・冬季の暖房(売り場・バックヤード)
売り場は外気温の影響に加えて、自動ドアの開閉やショーケースからの放熱によって温度が変化しやすいため、空調の稼働時間が長くなる傾向があります。一方、バックヤードも商品の保管や作業環境の確保のために空調が必要であり、季節を問わず一定の電力を使用します。
照明設備は、ビルインタイプでは約8%、単独店舗では約12%を占めるとされ、店舗の広さや照明配置によって使用比率が変わる点が特徴です。売り場全体を明るく保つ必要があるため、営業時間の長さに比例して照明の稼働時間が長くなります。主な設備は以下のとおりです。
・天井照明(売り場・バックヤード・トイレ)
・ショーケース照明
・屋外照明(店舗看板など)
天井照明は、店舗の明るさを一定に保つために広い範囲で使用され、売り場面積が大きいほど消費電力量が増える傾向があります。ショーケース照明は商品を見やすくする目的で使用され、冷蔵ショーケースや壁面什器など、設置数に応じて電力負荷が高まります。
店舗看板や外部照明も消費量に影響し、夜間の営業時間が長い店舗では使用比率が高くなるでしょう。
その他の設備は、ビルインタイプでは電力使用量の約20%、単独店舗では約8%を占めるとされ、店舗のサービス内容や設置されている機器の数によって構成比が大きく変わる点が特徴です。主な設備は以下の通りです。
・マルチコピー機
・ATM
・トイレの暖房便座・ハンドドライヤー
・レジ・ストアコンピュータ
・パソコン
・証明写真機など
単独タイプは店舗規模が比較的小さく、サービス機器の数も限定される傾向があるため、その他設備の比率が低くなると考えられます。その他の設備は店舗の立地や役割によって使用比率が大きく変動するため、電力使用量を把握する際はどのサービス機器を導入しているかを確認することが重要です。
コンビニの電気代を効果的に削減するには、やみくもに対策を行うのではなく、段階的に取り組みを進めることが重要です。コンビニの電気代を削減するための進め方について紹介します。
省エネを着実に進めるためには、店舗全体で取り組める体制づくりが欠かせません。まず、電力使用量の管理や改善策の検討を担当する役割を明確にし、誰がどの情報を把握するのかを決める必要があります。
店舗スタッフの協力も重要で、設備の運用ルールを共有し、省エネを意識した店舗運営が行える環境を整えることがポイントです。また、電気代の増減を一人の判断で追いにくい場合は、本部やオーナーとの連携を強化し、必要に応じて改善に向けた指示やサポートを受けられる体制を構築します。
電気代を削減するための第一歩は、店舗内でどの設備がどれだけ電力を使っているのかを把握することです。電力の見える化を行うと、設備ごとの消費量や使用の傾向が明確になり、改善すべきポイントを判断しやすくなります。
特にコンビニでは冷蔵・冷凍設備や空調など電力負荷の大きい設備が多いため、実際の使用量を数値で確認することが効果的です。電力計測の方法としては、電力会社の検針票や請求書をもとに月ごとの使用量を確認する基本的な方法に加え、専用の計測機器やデジタルツールを導入してリアルタイムで把握する方法があります。
電気代の削減を進める際は、最初に具体的な削減目標を設定することが重要です。明確な数値を決めると、どの設備を優先して改善するべきか判断しやすくなり、取り組みの効果も測定しやすくなります。目標を設定する際は、過去の電気代や電力量の推移を確認し、季節変動やイベント要因を踏まえて検討すると現実的な計画を立てやすくなります。
電気代の削減効果を継続するためには、実施した対策を定期的に見直し、改善サイクルを回すことが欠かせません。省エネは一度取り組んだだけで終わりではなく、店舗の状況や季節によって効果が変わりやすいため、継続的な管理が重要になります。
対策の実施後は、電力量や電気代の変化を必ず確認し、期待した効果が出ているかをチェックしましょう。また、設備の劣化や故障が原因で消費電力が増えるケースもあるため、定期的な点検も忘れずに行うことが大切です。
可能であれば、改善内容を記録し、次の取り組みに生かせるように管理すると効率的です。
電気代を着実に削減するには、店舗の状況に合わせた省エネ施策を選ぶことが重要です。コンビニは立地や設備構成、客層によって運用の特徴が異なるため、他店と同じ対策がそのまま効果を発揮するとは限りません。
たとえば、冷蔵ショーケースが多い店舗では、温度設定の適正化や霜取りの管理など、機器の運用改善が効果を発揮します。空調の使用量が多い店舗では、フィルター清掃や設定温度の見直しなど、日常的な管理で改善しやすい施策が有効です。
コンビニの電気代を確実に抑えるには、電力使用量の多い設備ごとに対策を行う方法が最も効果的です。設備ごとの特徴に合わせて実施したい具体的な省エネ対策を紹介します。なお、年間削減量や年間削減額の数値は、東京都地球温暖化防止活動推進センターの調査を元に紹介しています。
1.冷蔵庫ドアの開放時間を減らす(年間約1,041kWh、約33,312円の削減を目安)
2.ショーケースの吸排気口をふさがない(年間約639kWh、約20,448円の削減を目安)
3.ロードラインを確保する(年間約639kWh、約20,448円の削減を目安)
4.ナイトカバーを使用する(年間約1,064kWh、約34,048円の削減を目安)
冷蔵庫の扉が開いている時間が長いほど庫内温度が上昇し、コンプレッサーの稼働が増えて電力消費が増加します。開閉時間を短くするだけでも負荷を抑えられます。また、吸排気口をふさぐと冷却機能の効率が低下するため、商品や備品が塞がないようにレイアウトを見直すことが重要です。
1.おでん加熱時のふた閉めを徹底する(年間約354kWh、約11,328円の削減を目安)
2.フライヤーのセーブモードを活用する(年間約1,135kWh、約36,320円の削減を目安)
3.ホットドリンクは常温から温める(年間約289kWh、約9,248円の削減を目安)
4.給湯ポットの台数を利用者数に合わせて調整する(年間約515kWh、約16,480円の削減を目安)
おでん鍋はふたの開閉で温度が下がりやすく、加熱時間が長くなる原因になります。調理中や補充時以外はふたを閉めておくことで、一定の温度を保ちやすくなります。
フライヤーはセーブモードを活用して待機時の消費電力を抑えましょう。ピーク以外の時間帯にこまめに切り替えると効果を実感しやすくなります。
1.売り場・バックヤードの設定温度基準を守る(年間約1,905kWh、約60,960円の削減を目安)
2.バックヤードのエアコンを不要なときは停止する(年間約140kWh、約4,480円の削減を目安)
3.中間期、夏の夜間、冬の昼間に可能な限りエアコンを停止する(年間約6,264kWh、約200,448円の削減を目安)
4.エアコン使用時に入口扉を開放しない(年間約1,905kWh、約60,960円の削減を目安)
設定温度を適正に保つだけでも負荷が大きく変わり、エアコンの稼働が安定しやすくなります。バックヤードは人が出入りしない時間帯が多いため、不要時には停止する運用が効果的です。
また、入口扉を開放したままにすると冷気・暖気が逃げやすく、空調効率が大きく低下します。自動扉の調整やのれんなどの対策を組み合わせると、効率的な温度管理を実現できます。
1.バックヤードの不使用部分の照明を消灯する(年間約197kWh、約6,304円の削減を目安)
2.日中は窓際の不要照明を消灯する(年間約140kWh、約4,480円の削減を目安)
3.屋外照明の点灯時間を短縮する(年間約526kWh、約16,832円の削減を目安)
4.トイレ照明の消し忘れを防ぐ(年間約44kWh、約1,408円の削減を目安)
バックヤードは滞在時間が短いことが多いため、人がいないスペースの照明をこまめに消すだけでも電気代を抑えられます。日中は自然光で明るい売り場もあるため、窓際や入口周辺の照明を減らす運用も効果的です。
また、屋外照明は点灯時間が長くなりがちで、タイマー設定やLED化を組み合わせると削減効果を高められます。
コンビニの電気代に関するよくある質問を紹介します。
コンビニでは、空調の設定温度を適正に保つ取り組みが最も多く実施されています。温度管理を見直すだけでも電力負荷を減らしやすく、季節を問わず効果が期待できます。
次に多いのは、設備の使い方に関するルールづくりです。冷蔵ケースの扉開閉やバックヤードのエアコン運用など、日常的な行動を整えると無駄な消費を抑えられます。照明についても、照度を適正に調整する取り組みが広がっており、窓際の照明を減らす方法や屋外灯の点灯時間を見直す方法が採用されています。
1日の電気代は、店舗の規模や立地、設備の構成によって大きく変わります。月30〜40万円が平均的なコンビニの電気代とされるため、1日の電気代はおよそ1万円前後です。使用量の少ない店舗では8,000円前後に収まることもありますが、冷蔵ケースが多い店舗や空調の負荷が大きい店舗では1万2,000円前後になることもあります。
コンビニの電気代が高騰している理由は、発電に使う燃料費が世界的に高騰し、電力の調達コストが上がったことが大きな理由です。また、電力供給の逼迫によって市場価格が不安定になり、契約内容によっては電気代が跳ね上がりやすい状況が続いています。
加えて、再生可能エネルギー発電促進賦課金の引き上げが負担増につながっています。
コンビニの電力消費は昼間のほうが大きくなる傾向があります。昼間は来店客が多く、冷蔵ケースの扉開閉が増えるため冷却負荷が上がりやすい時間帯です。また、空調も外気温の影響を受けやすく、夏場の冷房や冬場の暖房がフル稼働になることが要因です。
コンビニの電気代は月30万円前後が目安で、電力単価の上昇により以前より高くなっています。特に冷蔵・冷凍設備の割合が大きいものの、店舗の大きさや設備構成によって消費量は変わります。
そのため、まずはどこでどれだけ電気を使っているのかを把握し、無駄を見つけることが重要です。電気や温度の見える化を行うならエネグラフが便利です。エネグラフはクラウド上でエネルギー使用量をいつでも確認でき、温度管理を含めた改善ポイントが判断しやすくなります。

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