コラム
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2025年8月1日
製造業において利益を安定的に確保するためには、売上の拡大だけでなく、日々のコスト削減が重要です。特に工場では、エネルギー費・人件費・設備維持費など多くの固定費や変動費が発生しており、どこに着目してムダを省くかが経営効率に直結します。本記事では、工場でコスト削減すべき項目と、削減アイデアを紹介します。
目次
工場の利益を向上させるためには、売上を伸ばすだけでなくコスト削減にも注力する必要があります。特に原材料費やエネルギー費、人件費などの固定・変動費は、日々の生産活動の中で確実に発生するものです。売上の増加は市場動向や需要の影響を受けやすい一方、コスト削減は内部の取り組みによって自社でコントロールしやすい点が特徴です。
また、利益率を安定させるためにもコストの最適化は欠かせません。どれだけ製品が売れても、無駄な支出が多ければ手元に残る利益は限られてしまいます。反対に、無理なく継続的にコストを抑える仕組みを整えれば、利益を安定的に確保しやすくなります。
コスト削減は工場の利益を高めるために欠かせませんが、何でも削ればよいというものではありません。手間がかかりすぎる対策や、品質・安全性に悪影響を及ぼすような取り組みはかえって逆効果です。まずは、削減しやすく、工場運営への影響が少ない項目から見直すのが効果的です。
電気・ガスなどの光熱費
工場における光熱費は、生産活動に直結する重要なコストのひとつです。機械や空調、照明など多くの設備がエネルギーを使用しており、その消費量は工場の規模に比例して膨らみます。
まず取り組みたいのは、不要な電力の見直しです。使っていない設備の電源が入れっぱなしになっていないか、照明が無人でも点灯していないかを確認しましょう。また、空調の設定温度や使用時間を適正化するだけでも、電気代に大きな差が出ます。エネルギー監視システムを導入すれば、消費量の見える化と分析が進み、ムダの発見に役立ちます。
消耗品費
工場では、作業用の手袋や清掃用品、文具など、さまざまな消耗品が日常的に使われています。個々の単価は安くても、長期的に見るとコストは積み重なります。特に、誰でも自由に取れるような保管方法では無駄が発生しやすく、無意識のうちに使いすぎているケースも少なくありません。
削減の第一歩は、消耗品の使用状況を把握し、在庫管理のルールを明確にすることです。例えば、必要な分だけ小分けにして支給したり、使用記録をつけたりするだけでも無駄を減らせます。また、製品の仕様を標準化し、同じ種類の消耗品に統一することで、発注の手間やコストの分散を防げます。
通信費
工場では、インターネット回線や社内電話、スマートフォンなど、通信に関する支出も見落とされがちなコストです。設備の監視や遠隔操作、現場と本社間の連絡にも通信インフラが欠かせないため、不要な契約や使っていない機器があっても、そのままにされていることがあります。
まずは、現在契約している通信プランを洗い出し、使用状況と費用を見比べることが重要です。複数回線が存在する場合は、利用の実態に応じて整理や統合を検討しましょう。
交通費
交通費は工場勤務における通勤手当や、出張、社用車の燃料代など、さまざまな場面で発生します。一件ごとの金額は少なく見えるかもしれませんが、従業員数や拠点が多くなるほど、年間での支出額は意外と大きくなります。
とくに注目したいのは、工場間の移動や定期的な出張です。これらが習慣化していると、目的が曖昧なまま継続されているケースもあります。まずは、移動や出張の必要性を見直し、Web会議やチャットツールで代替できる場面は積極的に切り替えましょう。
工場でコスト削減しにくい項目
以下の項目は、安易に削減を行うと工場全体のパフォーマンスや将来性に悪影響を与える可能性が高いため、慎重な対応が求められます。
・賃料
・原材料費
・研究開発費
・人件費
賃料は契約期間が長期に設定されていることが多く、削減の自由度が限られます。立地や物流コストにも関わるため、単純に安い物件へ移転することが得策とは限りません。
また、原材料費は市場価格や品質に直結する部分であり、安価なものを使えば製品の信頼性の低下を招くおそれがあります。
研究開発費は、短期的には成果が見えにくい一方で、将来の競争力を左右する重要な投資です。ここを削ると、新製品や改善の機会を失いかねません。
人件費についても同様に、過度な削減は従業員のモチベーションや生産性の低下につながります。優秀な人材の流出を招くリスクもあるため、むしろ人材育成や定着に投資する視点が重要です。
工場でおすすめのコスト削減アイデアを紹介します。
電力の見える化でムダを削減
電気代を削減するためには、まず消費電力の現状を正確に把握する必要があります。その手段として有効なのが、電力の見える化です。エネルギー監視システムを導入することで、設備ごとの電力使用量や時間帯別の負荷を視覚的に確認できます。
見える化によって、どの工程で無駄が多いか、どの時間帯にピークが発生しているかなど、改善ポイントを具体的に把握できます。また、現場ごとに使用電力量を比較できるようにすることで、省エネに対する意識向上にも効果的です。電力の見える化を導入する場合は、低価格で簡単に設置できるエネグラフがおすすめです。
照明のLED化でコストを抑える
LED照明は消費電力が少なく、同じ明るさでも大幅なコストダウンが見込めます。寿命が長いため、交換やメンテナンスの手間も軽減できます。
また、LEDは点灯・消灯のスピードが速く、必要なときだけ照明を使う「こまめなON/OFF」がしやすい点もメリットです。人感センサーやタイマーと組み合わせれば、無人エリアの照明の消し忘れを防げます。
空調設備の最適化で効率を向上
空調設備の運用は、工場におけるエネルギーコストの中でも大きな割合を占めます。快適な作業環境を保ちつつコストを抑えるためには、空調の最適化が欠かせません。
エリアごとの空調管理も重要です。全館一括で運転するのではなく、稼働エリアに応じて個別に制御することで、必要な場所にだけ冷暖房を供給できます。空調機器の定期メンテナンスやフィルター清掃を行うことも、運転効率の維持に役立ちます。
エア漏れ対策で無駄運転を防ぐ
コンプレッサーを使っている工場では、エア漏れによるエネルギーロスも見過ごせない問題です。空気漏れは目に見えづらいため、気づかないうちに多くの電力が無駄になっているケースも少なくありません。
エア漏れの主な原因は、老朽化した配管や接続部のゆるみ、継ぎ手の劣化などです。定期的に配管を点検し、漏れ箇所を特定して修理を行うことで、コンプレッサーの稼働回数を減らし、電力使用量の抑制につながります。
材料ロスと工数をカットする
製造現場における材料ロスや工数のムダは、直接的なコストの増加につながります。原材料の切れ端が多く発生していたり、検査工程で不良品が頻発していたりする場合には、見直しが必要です。
まずは工程ごとのロスを数値化し、どの段階でムダが発生しているかを可視化しましょう。加工精度を上げる、段取り替えの時間を短縮する、不良品の再発防止策を講じるなど、現場レベルでの改善が効果的です。
太陽光パネルを設置する
工場の屋根や遊休地にパネルを設置すれば、自家発電によって電力コストを削減可能です。特に電気代が高騰している昨今では、太陽光による自家消費のメリットが大きくなっています。また、余剰電力の売電や蓄電池との連携によって、災害時の非常用電源としても活用可能です。
再生可能エネルギーの活用は、コスト削減だけでなく環境配慮の面でも企業価値を高める施策でもあります。
工場でコスト削減する際に注意すべきことを紹介します。
品質や安全性を損なうコスト削減は避ける
コスト削減を急ぐあまり、使用する原材料の質を落としたり、必要な検査工程を省略したりすると、製品の品質に悪影響を及ぼします。品質が低ければ顧客からのクレームが増え、信用の低下や取引停止といった事態を招きかねません。
また、安全対策を省略することも絶対に避けるべきです。安全教育の簡略化や設備メンテナンスの間引きなどは、労災リスクを高めます。
短期的な効果だけにとらわれない
コスト削減を実施する際、短期的な数字だけを追いかけると、長期的には逆効果になることがあります。たとえば、安価な設備や部品に切り替えることで初期費用は下げられても、耐久性や性能が劣れば修理頻度が増え、結果的にメンテナンスコストが膨らむ可能性があります。
また、無理な人員削減や業務圧縮は、作業のミスや工程の停滞を引き起こし、トータルの生産効率を下げてしまう可能性が高いです。コスト削減策は、1カ月や3カ月先の成果だけでなく、1年後や数年後にどう影響するかという視点で検討しましょう。
社員の負担が増えないよう配慮する
コスト削減を推進する中で、現場の社員に過剰な負担がかかってしまうと、モチベーションの低下や離職につながるおそれがあります。社員が無理を強いられた結果、業務の効率が下がれば、かえってトータルの生産性も落ちてしまい、削減効果が打ち消されてしまいます。
コスト削減は、現場の理解と協力があってこそ成功するものです。施策を進める際には、社員の声を聞きながら改善案を共有し、納得感のあるかたちで進めることが大切です。
工場におけるコスト削減は、経営の健全化や競争力の強化に欠かせない取り組みです。光熱費や消耗品費、通信費など、比較的着手しやすい項目から無理のない範囲で始めましょう。また、電力の見える化や設備の最適化、再生可能エネルギーの導入など、中長期的に効果を発揮する施策を取り入れることが、持続的なコスト削減につながります。
エネグラフは、電力や設備の使用状況をリアルタイムで見える化し、省エネ・省コストの改善ポイントをわかりやすく提示するエネルギーマネジメントツールです。ぜひ導入をご検討ください。
太平洋工業(株)新規事業推進部 営業企画グループ
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