コラム
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2025年10月3日
電気料金を削減する方法として、企業が取り組みやすいのが「ピークカット」と「ピークシフト」です。電気代が高騰している近年では、どちらの方法も削減効果が高く、具体的な仕組みや導入手順を理解しておくことが重要です。本記事では、ピークカットとピークシフトの違いや導入ステップをわかりやすく解説します。
目次
ピークカットとは、電力使用が最も高くなる時間帯に一定時間、消費を抑える取り組みです。電気料金を抑えるには、契約電力を決める「最大需要電力(デマンド値)」を下げることが重要なため、多くの企業が取り組んでいます。
ピークカットと似た言葉にピークシフトがあります。それぞれの違いについて見ていきましょう。
ピークカットとピークシフトの違いは、電力需要を「減らすか」「時間をずらすか」という点です。ピークカットは、最も電力を使う時間帯に消費を抑えて最大デマンド値を下げる方法です。空調の設定を下げる、生産設備を一時停止するなどで、契約電力を抑え基本料金を減らします。
一方、ピークシフトは電力を使う時間をずらす取り組みです。昼間の高い単価を避け、夜間や早朝に稼働を移すことでコストを下げます。工場の夜間生産やオフィスの夜間蓄熱がその例です。
電気料金は、使用した電力量だけでなく契約電力と時間帯別の単価によっても大きく変わります。そのため、ピークカット・ピークシフトを導入すれば、電気料金を削減することが可能です。
契約電力は一年のうち最も高い30分間の平均の使用量を基準に決まるため、そのピークを低くすれば基本料金を削減することが可能です。現場では、空調・照明・生産設備の制御などを中心に対策します。
たとえば、工場では、電力負荷の高い機械を一時的に止める、生産工程をずらして同時稼働を避けるなどの工夫が行われています。また、空調や給湯設備にデマンドコントローラを設置し、自動的に電力を制御する企業も多いです。
ピークカットは設備投資を抑えて取り組めるのがメリットです。空調の制御設定を見直すだけでも一定の効果が期待でき、初期費用をかけずに始めやすい方法といえます。
昼間は電力単価が高く、夜間や早朝は安くなる料金プランが多いため、使用時間を変えるだけで電気料金の削減が可能です。
代表的な取り組みは、夜間の余剰電力を活用することです。工場では、電力負荷の大きい生産工程を夜間に前倒しする、生産スケジュールをずらして昼間の稼働を分散させるなどの方法が取られます。
近年は蓄電池を使ったピークシフトも注目されています。夜間の安い電力を蓄電し、昼間のピーク時に放電することで電気料金を削減できる仕組みです。
ピークカットやピークシフトを実施するには、電力使用の状況に応じた具体的な方法を選ぶことが重要です。導入の目的や設備投資の規模に応じて最適な方法を検討しましょう。
太陽光発電は、日中の電力消費が最も高くなる時間帯に自家発電で電力を補うことでピークカットに役立ちます。特に工場やオフィスビルでは、昼間の空調や照明、設備稼働がピークを迎える時間帯に発電した電力を直接使用することで、電力会社からの供給量を減らすことが可能です。
エネルギーマネジメントシステム(EMS)は、電力やガスなどのエネルギー使用状況をリアルタイムで監視・分析し、効率的な運用を支援するシステムです。EMSを導入することで、設備ごとの消費量や時間帯別の使用状況を把握でき、ピークカットに向けた具体的な対策が可能となります。
例えば、EMSを活用して空調設備の稼働状況を監視し、ピーク時の無駄な消費を削減することが可能です。また、生産設備の稼働データを分析することで、電力使用の最適化や負荷分散が実現できます。さらに、EMSは異常検知機能を備えているため、設備の異常や不具合を早期に発見し、迅速な対応にもつながります。
EMS関連商品の1つに、エネグラフがあります。この商品はエッジデバイスとクラウドを組み合わせたシステムで、初期投資を抑えつつ、リアルタイムでのデータ収集と分析が可能です。安価なエッジデバイスを設置するだけで、設定も簡単です。
ピークカットは設備やシステムだけでなく、従業員の意識改革も重要です。電力使用のピーク時間帯を理解してもらい、業務や設備の使い方を調整することで、最大デマンド値を効果的に下げられます。
例えば、昼休みや業務終了後に不要な照明やOA機器を消す、昼間のピーク時に電力負荷の大きい作業を分散させるなど、日常の小さな工夫が積み重なります。
昼間の需要がピークに達する時間帯に蓄電池から電力を供給することで、電力会社からの供給を減らし、最大デマンド値や使用量料金を抑えられます。工場やオフィスビルでは、照明・空調・生産設備などの電力負荷を蓄電池で補う形が一般的です。また、太陽光発電と組み合わせることで、昼間の自家発電分を蓄電池に貯め、さらに効率よくピークを抑える運用も可能です。
ピークカットを導入するまでのステップを紹介します。
ピークカットを導入する第一歩は、現状の電力使用状況を正確に把握することです。まず、1日の時間帯ごとの電力消費データを取得し、ピークが発生する時間や最大デマンド値を確認します。
次に、電力使用の内訳を設備ごとに整理します。空調、照明、製造設備、OA機器など、どの設備がピークに大きく影響しているかを特定することで、対策の優先順位を決めやすいです。
現状の電力使用状況を把握したら、自社に適したピークカットの対策方法を選びます。空調や照明の制御は比較的簡単に導入できる一方、生産設備の稼働調整は業務計画との調整が必要です。EMSの導入による自動制御は、リアルタイムで負荷を管理できるため、複数の設備を効率よく運用できます。
ピークカットの導入にあたり、国や自治体が提供する補助金や助成金を活用することで、初期投資を抑えられます。経済産業省や環境省、地方自治体の公式ウェブサイトを定期的に確認し、エネルギー効率化や省エネ設備導入に関する最新の情報を収集しましょう。
中小企業に役立つ省エネ補助金については、以下の記事を参考にしてください。
関連記事:【2025年最新】中小企業に役立つ省エネ補助金をエリア・設備別に紹介
ピークカットとピークシフトは、電力使用のピークを抑えたり時間帯をずらしたりすることで、電気料金の削減に大きく貢献します。導入にあたっては、現状の電力使用状況を分析し、自社に適した対策方法を選ぶことがポイントです。
効率的に電力を管理するためには、リアルタイムで使用状況を可視化できるエネグラフがおすすめです。ぜひ導入をご検討ください。
太平洋工業(株)新規事業推進部 営業企画グループ
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